「定年前」の基本の考え
退職給付金についても同様のことが言える。各企業で定められている退職給付金の算定 ルールや所得税法等における退職所得の課税方法などをみると、勤続年数が長ければ長い ほど有利な設定がなされていることがわかる。こうした社会制度は今後緩やかに変えていくことが社会的には望ましいが、現状の制度を前提にすれば、長期雇用の個人としての経 済的な利益は少なくないと考えられる。
定年を前に長年勤めてきた会社を離れて第二のキャリアを歩むことが望ましいかどうかはその人の置かれた状況によってケースバイケースであり、どちらが良いかを一律に決めることはできない。早期退職をした後に十分な稼ぎを得られる見込みがあればセカンドキャリアに向けて果敢に挑戦していくべきであるし、会社に残ったほうが利益が大きいのであればそのまま今いる会社で働き続けることを考えてもよいだろう。
逆に無計画に会社を飛び出したり、現在の会社で働き続けることを無条件の前提として考えることは好ましくないということである。いずれにせよ、キャリアの後半戦においては、目の前にある選択肢のなかから主体的に仕事を選択していく意識はやはり重要なのだと思う。
会社に残ることを選択するのであれば、そこで与えられた役割にかかわらず、まずは自身ができる限り最大限のパフォーマンスを仕事で発揮することが必要だろう。そのうえで、家計の観点からは、給与が高い時期にこれまで低く抑えられてきた報酬分をしっかりと回収しておく。そうした考えが「定年前の基本」となる。