戦争体験した世代の多くは亡くなり、直に体験を聞く機会は失われつつあります。そうしたなか、厚生労働省を中心に、戦争は体験していないが、当時の苦労や体験を学び語り継ぐ「次世代の語り部」の育成事業が進んでいます。すでに、20代の「語り部」もいます。
情報発信といえば、昭和館でもツイッターやフェイスブックなどのSNSやYouTubeの活用にも力を入れています。
こうしたツールは、興味深いですね。誰かひとりでも興味を持ってSNSで取り上げてくれると、予想もしなかった資料や写真があっという間にたくさんの人びとに広まります。
たとえば2020年に「昭和館」の公式チャンネルで配信した太平洋戦争の激戦地、ガダルカナル島で撮影された「日本人の捕虜 記録映像」と「大竹の日本人引揚者 記録映像」の再生回数は、60万回を超えました。
YouTubeに書き込まれるコメントはさまざまです。苦労をして帰還した引き揚げ者が美味しそうに米を食べる場面に共感したり、身内の姿を探したりする方もいます。当時の様子を知る貴重な資料を残し、発信するのが我々の役目です。
たまに「昭和天皇と戦争責任」についてご質問を受けることがあります。
先の大戦に関しては、さまざまな意見や思想があります。
しかし昭和館は戦争の評価は行いません。中立的な立場で戦争が庶民に与えた影響という視点から歴史的資料を集め、展示などの事業を行う国の施設です。
私の立場でひとつ言えるのは、昭和天皇ご自身でお感じになられたことと、世間でなされる評価には、違ったものもあったかもしれないということです。
「犠牲になるのはいつも庶民」。上皇に11年間仕えた“モノ言う元長官”の語る戦後史
戦争を体験した世代の多くが亡くなり、その記憶は風化しようとしている。軍人でも政治家でもない、一般の人びとが戦前・戦中・戦後にどのような暮らしをしていたのか。そうした資料を展示し、広く伝える役目を担うのが、千代田区の九段下駅前にある昭和館だ。館長の羽毛田信吾氏は、宮内庁長官として長く平成の天皇に仕え、大物政治家相手に一歩も引かない気骨の持ち主として知られた。その彼が若い世代が戦争という歴史を学ぶ意味について語った。
貴重な玉音盤が聞ける
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昭和の秘史が詰まった1枚のレコード