実話ならではの凄みに打ちのめされる

・福澤徹三『怪を訊く日々』(幻冬舎文庫、電子書籍あり)

「新耳袋」のように、実在する誰かの恐怖体験を記録した怪談を、「怪談実話(または実話怪談)」と呼ぶ。1990年代以降この種の本は数多く書かれ、今日でも毎月新刊が発売されているが、その中でもオールタイム・ベスト級の一冊にあげたいのが、福澤徹三の『怪を訊く日々』だ。

『侠飯(おとこめし)』などのアウトロー小説で人気の福澤氏は怪談の名手でもあり、怪談小説でも怪談実話でもハイクオリティな作品を発表し続けている。『怪を訊く日々』はその中でもトップクラスの怖さを誇る初期の怪談実話本だ。

葬儀の祭壇に死者の顔が浮かんだという話や、幽霊が出る音楽スタジオの話など、著者がホームタウン・小倉などで聞き集めたエピソードは、いずれも実話ならではの凄みが漂っている。

収録作中、個人的に忘れられないのが、「祀られた車」という著者自身の体験談だ。若い頃、友人と北九州にあるS霊園までドライブに出かけた福澤は、そこで異様な廃車を目にする。そこから先の展開がなんとも不気味で、イヤーな感じなのである。この記事を書くために久しぶりに読み返したが、やっぱりイヤーな気持ちになってしまった。

福澤氏の怪談は『怪を訊く日々』以外も秀作揃い。最近では、いわくつきの土地や建物を訪ね歩いたルポ『忌み地 怪談社奇聞録』(糸柳寿昭との共著)がスリリングで面白い。

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出典:福澤徹三『怪を訊く日々』(幻冬舎文庫刊)