大幅なコストカットが招いた3度目の障害

持ち株会社と傘下2銀行の当初の役員総数は90人。それをぴったり30人ずつに旧行に割り振ったのがみずほ銀行という組織だった。一方、他のメガバンク2行を見てみると、三菱UFJフィナンシャル・グループは三菱東京とUFJが、三井住友フィナンシャルグループは住友とさくらが、それぞれ約1:0.6で合併。当初から三菱主導、住友主導の組織運営が明確だった。

なぜみずほ銀行のATMばかりシステム障害が起きるのか?_3

「加えて、メガバンク3行の中でもっとも厳しい不良債権問題を抱えていました。コストがかかる組織運営を続け、不良債権処理に追われたことで、システム統合の費用を捻出できなかったのです。結局、1980年代に開発した化石のようなシステムをつぎはぎして使わざるをえませんでした。こうして起こったのが2002年と2011年の大規模障害です」(河浪氏)

他のメガバンクが2000年前後にシステムを刷新する中、みずほが新たな基幹システムの開発を始めたのは2011年、完全に刷新されたのは2019年のことだった。にもかかわらず、2021年、3度目の大規模障害が発生してしまう。

過去の障害の原因だったシステムが刷新され、組織的にも旧行対立もかなり解消され、収益面での改善もみられていた。それなのに、なぜ障害が再発したのか?

「ひとつの要因は、統合から20年の反省をふまえて、コストを大きく圧縮したことにあります。組織のスリム化が行なわれ、結果としてシステムの運営部門の人員が大きく減らされました。また、システム周辺で使うハード機器の交換も先延ばしにされました。

さらに、組織のスリム化にともない、行内が委縮してしまい、問題を上層部に報告しにくい組織になっていました。それを金融庁からは、『言うべきことを言わない』と指摘されました。実際、2018年に同じようなATMの障害が起きていたのですが、それが経営陣に矮小化して伝わっていたため、ATMの仕組みを変更するような予防策がとられなかったということが判明しています」(河浪氏)

では、今後4度目のトラブルは起こるのだろうか?