「文字がかわいそう」
鴻池 いいですね! 僕なんかは「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー」っていう作品をWikipedia形式で書いたのですが、松波さんのやりたいことわかる気がする。
松波 出版社は純文学に対して「もう売れなくてもいいじゃん」って開き直ってる感じもあるけれど、基本的なルールとして「活字だけでやっていく」っていう縛りがある。
文化事業をやってるんだっていうような、編集者のプライドもあるのかもしれない。だからそうなると、作家側はどうしても自由にはいかない。
鴻池 ていうか、映像とか、踊る文字とか、編集めんどくさそう(笑)。
松波 古代の人たちは象形文字で、つまり絵で言葉を書いていたわけじゃないですか。どうやったら象みたいな形で描けるんだろうって試行錯誤して、それが伝わって文字になった。
筆順もそうだけど、イラストレーション込みだったんですよ。映像的な。で、私としては、それをもう 1 回取り戻したいんです。小説の中身が動いたり踊ったりしたら、読みやすいですよ。文字自体が凝り固まっているので、それを緩めてあげるわけです。だって、文字がかわいそうじゃないですか! 元々は動きがあったのに、今みたいにガチガチにされてしまって。
鴻池 「文字がかわいそう」(笑)。なんか可愛いですね、その発想。
松波 YouTube とか新しいメディアが今後、もっと出てきます。そういったものだけでなく、哲学とか、漫才とか、これらも取り込んだ小説ができるんだとしたら、もう私は小説っていうのは絶対、漫画や映画や演劇や音楽やあらゆるメディアより強いと思いますね。
鴻池 いやー、いい話が聞けた。勉強になりました。また飲みましょう!
前編に戻る。→芥川賞って何!? 純文学って何!? 作家同士が居酒屋で討論してみたところ…? 松波太郎の巻(前編)
撮影/長谷部英明 編集協力/株式会社ロト(佐藤麻水)