ちなみにビンバスを運行しているビンバス社は、ベトナムの新興財閥であるビングループに属する。同財閥は不動産開発から学校・病院経営、ベトナム政府悲願の国産車の開発まで手がけている。このバスのように、世界標準のサービスをベトナム国内に持ち込んだことが、同財閥の急成長している秘密なのかもしれない。
ベトナムでのランチにはぜひ家庭料理を
さてターミナルからビンバスに乗った私が最初に目指すポイントは、乗車した「ロンビエン・バス・ターミナル」の隣の停留所「ベトナム・キューバ小学校前」だ。「えっ1区間だけかよ」と、言わないでほしい。ここにぜひ皆さんに味わってほしい料理があるのだ。店の名前を「1946」という。ベトナム初の共和国が成立し、フランスからの独立の交渉が進められていた1946年にちなんでいる。
ベトナムを旅行していて、現地の人にお勧めレストランを尋ねてよく紹介されるのが、外国人観光客用に用意されたようなレストランだ。それはそれで悪くはないのだが、物足りなさがあるのもたしか。かといって、ど・ローカルなお店で食事をする勇気もちょっとない……という人に「1946」はちょうどよい。外国人観光客はもちろん、ハノイ市民にも大人気だからだ。
人気の秘密は、懐かしいベトナムの家庭料理が味わえること。フォーや生春巻きのような、日本でも食べられる料理をここで注文してもつまらない。ぜひ「聞いたことのない料理」にチャンレンジしてほしい。注文のコツは、スープと野菜料理を必ず付けること。丁寧に出汁が取られたスープの味は鮮烈で、そのまま飲んでもよいし、ご飯にかけて食べてもよい。日本ならはしたないといわれる行為でも、こちらではOKだ。不思議なもので野菜は、たとえば同じ空心菜炒めでも日本で食べるそれと、ベトナムで食べるそれはインパクトが違う。野菜の持つ生命力の違いなのだろうか。複数で訪れてたくさんのおかずを注文して少しずつ取り分けて食べるのが楽しい。あいにくこの日私はひとりだったが、撮影用として多めに注文した。女性なら2~3人前だろうか、これで料金は16万5000ドン(約990円)だった。