バスから電車に乗り換える
お腹がいっぱいになったあとは、またバス停に向かって終点の「ハオナム」停留所を目指す。今度はお土産を探しに行こう。
タクシーと違うバス旅の魅力は、料金が安いことに加えて、ゆっくり車窓からの風景を楽しめること。ここでもタンロン城址のレンガ塀、国会議事堂や、遠くホーチミン廟を臨むことができる。またかつてはフランス人街と呼ばれた場所を通り過ぎる。多くが官公庁や各国大使館となったフランス建築の街並み、緑ゆたかな景色が窓外に広がる。ハノイの旧市街とは異なるおもむきの街だ。
バスで終着駅の「ハオナム」停留所について、そこでハノイ都市鉄道2A号線の「カットリン」駅に乗り換える。ベトナム初の市内をつなぐこの鉄道は、2021年11月に運行を開始した。中国政府の援助を受けて、2011年に着工、当初は2015年に開通の予定だったが、遅れに遅れて昨年ようやく営業を開始した。ハノイメトロの愛称があるものの、この新しい都市鉄道には地下部分はなく、全長13.1kmの高架上を走る。ちなみに南部のホーチミン市の鉄道網は日本政府の援助を受けている。一つの国に寄りかかって援助を受けて「債務の罠」に陥るようなことはせず、さまざまな先進国から援助を引っ張ってくる「したたかさ」も、ベトナムの顔である。
カットリン駅は、見た目に駅舎とは思えない現代的なスタイルの建物。切符売り場は正面から入り、エレベーターで2階にあがったところにある。
券売機は数台、フロアに散在している。券売機の画面右下の「English」のボタンを押と、ベトナム語表示から英語表示に切り替わる。タッチパネルに路線図が示されるので、目的の駅名にタッチすれば料金が表示される。あとは挿入口にお金を入れればOK。英語がわからなくてもパネルに表示されるので直感的にわかるだろう。
駅のホームは、改札機をでてさらに上がった3階にある。現在は10分間隔で運行されている。線路を覗こうとホームの端に立ったら、拡声器をもった駅員さんに「ホームの端を歩かないように!」とたしなめられてしまった。ベトナムの駅員さんは怖いので、撮り鉄のみなさんはご注意を。
電車は高架を走るので、ハノイを俯瞰するように観光できる。60〜70年代に建てられたプレハブ式集合住宅や、幅の狭いペンシルビルの向こうに林立する高層マンション群。ハノイの発展の歴史がパノラマのように窓外を流れていく。