「最初は家族にもいえなかった…」若手女性(タクシー)ドライバーのやりがいと葛藤_2

ほっこりエピソード

――ほっこりするようエピソードも、たくさん体験されているんでしょうね。

中島 お客様からかけていただく言葉で、最も嬉しいのは、“ありがとう”という一言です。乗っていただいて良かった。お乗せして良かったと思えるのが、その言葉をかけていただく瞬間です。その中でも最高に嬉しかったのは、今日、これから手術を控えているお客様をお乗せしたときのことでした。

岡本 私は…そういう経験はないです。

中島 僕もそのときが初めてで。誰だってそうだと思いますが、手術前は怖いじゃないですか。しかもそのお客様は、今にも倒れちゃうんじゃないかというほど真っ青な顔をされていて。ずっと「大丈夫ですよ」「きっとうまくいきますから」「元気になりますから」と、言い続けていたんですが、話しているうちにどんどん明るくなっていって。

――そのときのお客さんの気持ちが、わかるような気がします。

中島 病院に到着して降りられるとき、「ありがとう」と言っていただいて。「運転手さんのおかげで頑張れそうな気がする」と仰って。あの瞬間のお客様の言葉と笑顔は、いまでもはっきりと覚えています。

岡本 自分が元気をもらった話でもいいですか?

――もちろんです。ぜひ、聞かせてください。

岡本 ドライバーになって楽しいこともいっぱいあったし、お金もたくさん稼げるし、休みは多いし…といいことだらけでしたが、それでも家族にも友達にもタクシードライバーをしているということが言えなくて。引け目があったというか、なんとなく、恥ずかしいような気がしていて……。

中島 それは、よくわかる。僕も最初、ちょっとだけそういう気持ちがあったから。

岡本 で、あるとき、ナレーターのお仕事をされている方をお乗せしとき…なぜその方に、素直に自分の気持ちを話せたのか不思議なんですけど、恥ずかしくて、親にも友達にも言えなくてとお話ししたら、「そんなことはないと思う」と。すごく素敵な職業だと思うし、「女性でタクシードライバーをしているのは、むしろ、かっこいいと思う」と、仰っていただいて。

――両親や友達に伝えた?

岡本 はい。自分で選んだ職業なんだから、もっと自信を持とうと思って。悪いところじゃなくて、いいところに目を向けようと思って、次に帰省したときに伝えました。

中島 ご両親の反応は!? 反対された?

岡本 いえ。最初はビミョーな感じだったけど、これだけもらっているんだよ、と伝えたら、社会人1年目でその金額はすごい!と目を丸くして。それからは、仕事を聞かれたときに「タクシードライバーです!」と自信を持って言えるようになりました。