懲戒規定はないが…
では、いじめが発生した場合、担任教師を厳しく処罰することは可能なのでしょうか。まず、現行法上の話をすると、いじめが発生した場合にクラスの担任教師を処罰できるとする法律はありません。
また、いじめ防止対策推進法には教師に対する懲戒規定がありません。
しかし、いじめの放置や隠蔽など、いじめを認識していながらも適切な措置をとらなかった場合には、地方公務員法32条に違反することになりますし、東京都の場合には「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」によると、教師がいじめを助長したり、隠蔽したり、その他不適切な対応をしていた場合には、当該教師を懲戒処分する規定を設けているので処分される可能性があります。
最近だと、重大事態としていじめ調査を行わなかったことや、校長と教頭などが「いじめはなかった」旨を発言していたことは、職務上の義務に反し、国家賠償法上の違法になると判断された裁判例も出てきました。
この判例は「教師がいじめを否定すること」や「いじめによる不登校という重大事態 の調査を行わないこと」を司法が違法だと明言した点で非常に画期的なものでした。つまり、いじめを隠蔽したり、意図的に放置したりしても、教師は何も罰則を受けないということはないのです。
このように文部科学省は、むしろ積極的にいじめを発見して対応するように求めており、「いじめがある学校=ダメな学校」と認識していません。「先生に罰則があれば先生も必死にいじめを根絶してくれるのでは?」これもよくお問い合わせいただく話です。