なぜ、そうまでして友達との話題についていく必要があるのか。それは、多くの若者がたくさんのLINEグループに24時間常時接続しているからだ。各グループでそれぞれ話題に上った作品を観ていなければ、会話に参加できない。
発言頻度は、そのままコミュニケーション能力として個人評価にカウントされる。学校にしろ職場にしろ、現代社会でもっとも必要とされているスキルがコミュニケーション能力だ。切り捨てることはできない。
麻里男が学校の勉強のみならず、ラジコンやゲームやプラモ作りといったホビーまでも義務のように修得させられていた理由が、彼の口から語られる。
「現代では頭でっかち人間は出世しません。人とのつきあい方、幅の広さと人間的魅力がないとダメです」
「人とのつきあい方」「幅の広さ」「人間的魅力」を念頭に、日々コミュニケーション能力をアップさせるべく、コンテンツを効率的に“消化”しようと必死になっている現代の若者の姿が、麻里男に重なる。
さらに麻里男は言う。「大学受験まであと8年8ヵ月12時間しかないから一分一秒を大切にしないと負けるよ」。
これと似たようなことも、あるZ世代が言っていた。
「つまらない作品を等倍速で観て無駄な時間を使ってしまった……という徒労感は半端ない。その間に同世代はもっと有意義なことをして、もっと先に行ってしまう。回り道なんてしている暇はないんです」