ファンのメッセージで埋め尽くされた桜の木
ファンを温かく出迎えてくれるのは、劇場ロビーを365日彩る桜の木を模した展示。壁に描かれた木の絵に、ピンクのメッセージカードが貼り付けられたものだ。はじまりは、『この世界の片隅に』(2017年2月18日〜2019年12月19日)と『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019年12月20日〜2021年11月12日)を、延べ5年にわたる超ロングラン興行したとき。ファンの方が、作品や同映画館への思いをメッセージカードにしたため、それを掲示したことがきっかけだった。コロナ禍による緊急事態宣言で同映画館も営業自粛を余儀なくされた中(そんな中でも“このセカ”の無観客上映を実施)、スタッフがそのメッセージに励まされた体験から、2021年4月5日の春馬さんの誕生日に合わせてSNSを通じてメッセージカード募集を呼びかけたという。すると、日本はもちろん海外からも送られてきて、あっという間に満開に。現在、3本目の木を栽培中だ。
さらに待合室には、作品のメイキング写真や春馬さんが同映画館を訪問した際の秘蔵写真、サインの展示、監督や出演者が舞台挨拶を行ったときの動画の上映もあって、ちょっとした春馬さんミュージアムになっている。
これらはすべて、「地元のスターの足跡を残したい」という寺内龍地館長の思いから、手弁当で行っているもの。しかしこの思いが、全国の映画館での『天外者』七夕上映会や『森の学校』の再上映など、春馬さんの旧作を上映する動きへと繋がっていることは間違いない。
「普通は(亡くなって)1年くらいで風化するでしょ? ところが彼の場合はもう3年目ですよ。(月命日の)18日に毎月来てくれるファンもいる。(“このセカ”の)片渕須直監督に“酔狂な人”と言われたことがあるけど、個人経営の映画館だからできること。ひとりぐらい、こういう人間がいてもいいでしょ」(寺内館長)。