いずれはスクリーンを増やして2スクリーンに
当時の名残が劇場内に残っている。最後尾にある立ち見スペースだ。今の映画館の多くは消防法で入場者数も限られ、全席指定が基本だが、昔は満席になったら立って見るのも当たり前だった。
しかし1990年代に東宝の直営館によるシネコンができると、一番館としての契約更新は終了に。さらに東日本大震災で2スクリーンが被災。残りの2スクリーンで再スタートを切ったが、現在、エアコンの修理もあって300席の1スクリーンだけで経営している。
「昔はみんな、移動手段が公共交通機関だったので、土浦駅に近いここは最高の立地だった。しかし車社会となった今は、交通手段さえあればどこにでも行けるからね」(寺内館長)
現在は新作を都心より少し遅れて上映する二番館のカテゴリーとなり、大きく分けるとミニシアターの扱いに。それでも、「映画は作品次第。いい映画を上映したい」という思いは変わらない。その思いを貫いた結果が、土浦と同じ、海軍航空隊のある広島県呉市を舞台にした“このセカ”のロングラン興行であり、春馬さんが魂を込めて演じた出演作の上映である。
館長自身は音楽から作品に惹かれることが多いそうで、もうひとつのスクリーンのエアコンを早く修理して他の上映作品を増やしたいという。
「映画『ひまわり』(1970)のラスト、ミラノ中央駅で別かれるふたりのバックに流れるテーマ曲。あれはよかったねぇ。『プラトーン』(1986)でウィレム・デフォーが倒れるシーンも印象に残っている。あと上西雄大監督の『ひとくず』(2019)。あれも音楽がいいんだよ」(寺内館長)
ちなみに寺内館長の実兄は、昨年亡くなったギタリストの寺内タケシさん。お兄さんの出演作『エレキの若大将』(1965)を、同映画館で鑑賞できる日が来ることを期待している。
取材・文/中山治美 構成/松山梢
土浦セントラルシネマズ
茨城県土浦市川口1-11-5 TCビル 2F
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