青キップを受け取りつつ、反則金は支払い拒否。刑事手続へ
僕が指摘を受けた違反は、いわゆる“青キップ”で処理されるものだ。
毎日、膨大な件数が発生する交通違反処理の効率化と迅速化を目的とした、いわゆる“反則金制度”で用いられるのが青キップ。
違反行為のうち比較的軽微な事案は“反則行為”と呼ばれ、刑事処分による罰則適用に代え、反則金の納付という方法で簡易的に処理される。
平たく言えば、ちょろっとした違反でいちいち裁判をやってたら世の中回らないので、サクッと“反則金”を納めればそれでチャラにしてやるよ、という制度である。
一方で、告知された違反内容についてもし納得できなければ、反則金は納めず、通常の裁判の開廷、つまり“刑事手続”を求める権利を我々国民は持っている。
翌7月8日、取締りをした警察官から「署の方に連絡をいただいたそうで。つきましては昨日の違反処理をしたい」という電話連絡があり、僕は指定された交番に出向いた。
警察官は、昨日の警察署への電話で話がついたと思い込んで待ち構えていたようだ。
ところが、僕が違反の事実はないと変わらず認識していること、今回の件で責任が問われるとしたら、瑕疵のある道路標示を設けた方だと思っていることを告げ、改めて「否認します。刑事手続をしてもらいますので」と伝えると、驚いたような表情をしていた。
きっと、こんなにしょうもない違反でここまで頑張る人は珍しいのだろう。
違反金をサクッと納めて終わりにする方が、ずっと楽ちんだからな。
はっきり言いましょう。
ネタに飢えているフリーライターを、侮ってもらっちゃあ困る。
そう、僕はすでに「この顛末、いつか原稿にしてやろう。ウッシッシ」と考えていたのだ。
交番では、違反を認めたことになる書類への署名や押印はすべて拒否し、ノーサインの「交通反則告知書」=青キップを受け取った。
警察官は「もしどこかの時点で気が変わったら、期限までに反則金を納付してくださいね」と、6000円の納付書も一緒に渡してきたが、僕は決意を新たにすべく、帰宅後すぐに破いて捨てた。
次のステップは、青キップに示されている日時に警視庁・池袋通告センターというところに出頭し、正式に“刑事手続希望”の旨を告げればいいようだ。
意外なほど好印象だった、警察のその後の対応
7月28日。
戦う気満々で池袋通告センターに出頭した僕は、やや拍子抜けしてしまった。
窓口で対応してくれた女性警察官は、なぜだかとても優しく、朗らかな態度で「否認して刑事手続をご希望ですねー。分かりました」と言いながら、今後、僕がとるべき手順を、わかりやすく教えてくれたのだ。
なんだか、「じゃあ、頑張ってくださいね!」と背中を押されているような気分にさえなった僕は、ややタジタジとなりながら、新しい書類を受け取った。
しかしよく見るとその「交通反則通告書」は、前段階の「交通反則告知書」のような青色ではなく、うっすら赤い色に変わっている。
“この野郎、手こずらせやがって”とでも言いたげな、無言の圧力のようなものを感じざるを得なかった。
次に指定された出頭日は、3ヶ月弱後の10月15日。
出頭場所は、東京・錦糸町にある警視庁・交通部交通執行課墨田分室というところだった。