後宮との出会いとその魅力
――はるおかさんが中国史や後宮ものというジャンルに興味を持ったきっかけを教えてください。
中国史に興味を持ったきっかけは小野不由美先生の『十二国記』です。はじめて読んだのは中学生のときですが、緻密に織りあげられた古代中国風の世界観と、そこで生きる王や麒麟、彼らをとりまく人びとの波乱万丈な人間ドラマに圧倒されたのをおぼえています。
後宮ものというカテゴリーでは酒見賢一先生の『後宮小説』が入り口でしたね。後宮という特殊な舞台について具体的なイメージがわいてきました。おなじく酒見先生の『泣き虫弱虫諸葛孔明』も大好きで、私にとっては三国志の世界の導き手でした。
――今や“古典”とも呼べる『十二国記』や『後宮小説』は、多くの人にとって中華ファンタジーや後宮ものへの入り口となっていました。そこから小説家を目指されたきっかけは?
小説家を目指したきっかけというか、書きたいと強く思うようになったのはやはり『十二国記』の影響が大きいです。たくみな筆致でつづられる力強い物語や心に響く言葉に刺激を受け、自分でも書いてみたいという衝動が抑えられなくなりました。その衝動のままに作品を書いていったんですが……表現したいものはたしかにあるのに、自分の能力がそれに全然追いついていないことを痛感させられ、何度も心折れそうになりましたね。行き詰まって書くことがつらくなったときは『十二国記』を読みかえして、「こういう作品を書きたいと思ったんだ」と初心にかえるようにしていました。そういう意味で、『十二国記』は私の原点ですね。