GMOが求めた能動的サイバー防御に政府関係者は戸惑い

そもそも、GMOが求めた能動的サイバー防御は、個別企業の要請に応じて発動する仕組みではない。政府関係者からは戸惑いの声も上がる。サイバー攻撃に対して、警察や政府が何でも解決してくれるわけではないのだ。

もっとも、サイバー犯罪における警察の仕事は、犯人を捕まえることだけではない。警察庁のサイバー特別捜査部は、国内外の事件を横断的に分析し、攻撃集団の関与を見極める「アトリビューション」や国際共同捜査を進めている。

写真はイメージです
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過去にはランサムウエア集団「LockBit(ロックビット)」を巡る国際捜査に参加し、暗号化されたデータの復号ツールを開発した。捜査で得た情報を民間に還元し、新たな被害を防ぐことも重要な役割になっている。

サイバー攻撃への対応は警察だけで完結するものではない。被害企業自身やセキュリティー会社、専門家、国内外の関係機関など、多くのプレイヤーが関わる。警察もその一つだ。こうした基本的な構図が、報道の現場では十分に理解されているだろうか。

新聞メディアもわかってないまま報道「脅迫を増幅させる恐れ」

GMOの対応は象徴的だ。巨額の金銭要求に始まり、情報公開やランサムウエア攻撃の予告、政府への要請、さらに攻撃者の特定につながる情報提供者への最大100万ドルの懸賞金まで打ち出した。

次々と発表される動きはニュースになりやすい。だが、会社側の発信に乗って騒ぐだけでは、攻撃者の脅迫を結果的に増幅させる恐れもある。

サイバー犯罪では、従来の事件報道のように、捜査開始や逮捕の有無ばかりを追っていても、国境を越える攻撃の実態は捉えきれない。

ある若手記者は「今は警察当局も被害企業に配慮して、サイバー事件ではほとんどマスコミに中身を話さない。一部の社が、GMOの問題を巡り『警視庁が捜査していることが分かった』との記事を書いていたが、サイバー捜査では今や警察庁が司令塔となり、都道府県の枠を超えた連携が基本だ。警視庁が捜査しているという情報自体にニュース性はないが、社内の上の人たちの相場観がアップデートされていない」と声を落とす。

もちろん、警察の捜査を追うことに意味がないわけではない。ただ、それだけでサイバー事案の全体像が見える時代ではなくなっている。どんな手口で侵入されたのか。企業は危険性をどこまで把握していたのか。被害拡大を防ぐため、どの組織がどう動いたのか。

警察の動向だけでなく、技術的な背景や国際的なサイバー情勢にも目を向けなければ、肝心な問題を見落としかねない。

AIの進化によって攻撃の速度と規模が飛躍的に高まるのは間違いない。だが、AI脅威論を声高に叫び、劇場型の様相を呈してきた不正アクセス騒動の派手な展開を追いかける前に、昔から指摘されてきた基本的な対策をどこまで徹底しているのか。

企業だけでなく、報道する側も、今回の騒動を機に足元を見直す必要があるのではないか。

文/鳶田新一郎