日本政府がいま「緊急要請」を出す本当の理由は?
では、日本政府はなぜ、突然「緊急要請」という強い言葉を使ったのか。その理由を知る手掛かりは、細野大臣が今回の報道より前に行った公式記者会見にある。
10月20日の会見で、細野大臣は11月2日に国民、自治体、中央省庁のそれぞれに対して緊急要請を出す方針を説明していた。
国民への要請については、食事やトイレの備え、建物の耐震化、家具の転倒防止などを挙げ、防災意識を改めて高めたいという考えを示している。
そして、11月2日という日付には明確な理由がある。
この日は、政府の防災対策の司令塔となる「防災庁」が発足する日なのだ。
つまり、今回の緊急要請は、防災庁の発足に合わせて国民や行政機関に防災対策の徹底を促すものとして、以前から準備されていたのである。
細野大臣は会見で、南海トラフ地震や首都直下地震などの巨大災害への対応にも言及。避難所の環境改善や、自治体の防災体制の強化が重要だとの考えを示していた。
少なくとも公表済みの説明では、AIによるサイバー攻撃や第三次世界大戦を理由に緊急要請を行うとはされていない。
そもそも、日本政府が国民に1週間分の備蓄を推奨するのは、今回が初めてではない。
2026年版の防災白書にも、各家庭で最低3日分、可能な限り1週間分程度の生活必需品を備蓄しておくことが重要だと明記されている。
農林水産省も以前から同様の備蓄を推奨しており、2019年には家庭備蓄に関するポータルサイトを開設している。
つまり、今回新たに1週間分の備蓄という基準が設けられたわけではない。従来から求めてきた防災対策を、新組織の発足に合わせて改めて呼びかけるということなのだ。
そもそも、日本に暮らしている以上、サイバー攻撃や戦争の危険性とは関係なく、日頃から備蓄をしておく必要がある。
南海トラフ巨大地震や首都直下地震に加え、全国各地で地震や台風、豪雨などの大規模災害が発生する可能性があるからだ。
農林水産省によれば、大規模災害ではライフラインの復旧に1週間以上かかるケースがあり、救援物資が届くまでに3日以上を要する場合もある。
実際、2016年の熊本地震では、発災後3日目の避難者が約18万4000人に達した一方、同日の食料供給量は約13万食と、十分な量を確保できていなかった。
政府が最低3日分、できれば1週間分の備蓄を推奨するのには、こうした過去の災害の教訓がある。
内閣府は飲料・調理用の水について、1人1日3リットルを目安としている。1週間分なら1人21リットル。さらに保存食、災害用トイレ、カセットコンロ、常備薬なども準備しておきたい。
もちろん、大量の食料を慌てて買い込む必要はない。普段食べる食品を少し多めに購入し、消費した分を買い足す「ローリングストック」でも備蓄は可能だ。
今回のニュースで注目すべきなのは、「第三次世界大戦が始まるのか」という根拠のない憶測ではない。
災害はもちろん、サイバー攻撃によって社会インフラが停止する可能性もある時代に、家庭がどれだけ備えられているかということだ。
「緊急要請」という言葉に驚く前に、自宅に1週間分の水や食料、災害用トイレがあるかを確認する。それこそが、今回のニュースを受けて最初にすべきことではないだろうか。
文/集英社オンライン編集部












