利益を生むAIが、同時に経済を止める武器に

冷凍庫が50度になったのは、AIの反乱ではない。人間がつないだ設備の弱点を、誰かが突いたのである。しかしAIが、その弱点を探し、攻撃を組み立て、何百、何千という対象へ広げる側に回ったとき、被害の規模と速度は変わる。私はそれを「AIサイバー戦争」と呼びたい。

戦争という言葉が大げさだと思う人もいるだろう。だが、銃声がしないから戦争ではないとは言えない。電気が止まり、物流が止まり、医療が止まり、金融への信頼が揺らぐなら、それは人々の生活と国家の基盤を攻撃する行為である。

AIX革命の果実を誰が手にするのか。これまで市場は、その問いに夢を見てきた。しかし、これから問われるのはもう一つのことだ。AIによって作られる利益を、誰が守るのか。

利益を生むAIが、同時に経済を止める武器にもなる時代。強い企業とは、AIを導入した企業だけではない。攻撃を受けても倒れず、顧客と社会の信用を守り、事業を続けられる企業である。

AIはブームではない。時代そのものである。そして今、その時代は、私たちの画面の中から、冷凍庫の温度を変えるところまで降りてきた。

文/木戸次郎  写真/shutterstock