大手銀行でリーダーの立場につくアメリアという女性の話をしたい。
彼女はいつも同僚や部下をこまやかにサポートしている。誰かに適した業務があれば、社内で公開される前に教える。誰かが昇進を目指していたら、上層部が重視している点をさりげなく知らせる。彼女がいろいろと手をまわしてくれなかったら、みんなだいぶ仕事がやりにくくなるだろう。アメリアは生まれつき人助けをするタイプだ。ぜひ味方にいてほしいタイプ。けれど唯一、その強力な支援を得られない人がいる――アメリア自身だ。あまりにも利他的すぎるのだ。
仕事ができないわけでは決してないのに、手伝いのプロジェクトに気を取られて、メインの業務が充分にこなせず、四半期の査定も振るわなかった。要改善と宣告される水準をかろうじて回避した程度。上司からのフィードバックには、励ましがこもっていたけれど、一言で言えば「ちゃんと集中しろ」だ。
補助に回ったことで仕事がおざなりになっていたわけではない。彼女の貢献が人目につかなくなっていたことが問題だったのだ。会社という世界で重要なのは「自分が何をしたか」ではなく、「自分が何をしたと上司に思われているか」だ。そんなのはフェアじゃない気がするかもしれないけれど、見えないことを察してもらうわけにはいかない。自分の働きを上司に視認させることも、仕事のうちだ。
アメリアから葛藤を打ち明けられた私は、私自身が父から聞いた教えを話した。「そりを引くなら先頭の犬になれ。さもなきゃ景色は変わらないぞ」。そりを引っ張る犬たちの先頭にいれば、負担も大きいけれど、進行方向の景色を見ていられる。後ろで走る犬の視界に入るのは、前の犬のお尻だけ。ひたすらお尻だ(親が子どもに言い続けるにしては変な教訓だけれど、私のリーダーシップ精神はこんな父によって培つちかわれた気がする)。
上司は、アメリアが本来の業務をきちんとこなしているかを知りたがっている。部下のサポートに明け暮れながら上司を納得させるのは不可能だ。キャリアを守るために、アメリアは〈自分勝手〉になる必要があった。













