前向きな曲が多いのに、元々自分は後ろ向きな人
そんな苦悩の渦中にいた彼女を救ったのが、3枚目のシングルでバラード曲の『Alone』。
売上こそデビュー曲に及ばないものの、彼女の元には「この曲で泣けた」「自分の気持ちを代弁してくれた」という女性たちからの切実な共感の声が届く。
「やっと自分のバラードを認めてもらえた。アーティストとして認められた感じがしました」
本当に切ない悲しみを抱える人ほど、人前では泣けないもの。だからこそ「部屋で一人、曲を聞きながら涙を流して楽になれるような役割ができればいい」――それが彼女の音楽制作における揺るぎない軸となる。
その日常から歌を生む独特の感性は、思いがけない場面でも発揮される。切ない失恋を描いた『One Room』(2002年)の発想の源は、なんと我が子の離乳食作り。
小分けにした離乳食を冷凍庫へ入れる日常のひとコマから、「冷凍庫の奥の方に、別れた恋人が作り置きしていたシチューを見つける」というストーリーの着想を得たというから驚きだ。
「話さない方がいいんじゃないかというストーリーなんですけどね(笑)。何が曲のきっかけになるかわからないですよね」
デビューから30年という節目を迎え、岡本は自身の内面とも穏やかに折り合いをつけている。
「変な話、前向きな曲が多いのに、元々自分は後ろ向きな人なのです(笑)。でも、後ろ向きだからこそ人に寄り添う前向きな曲が生み出せるのかもしれません。今はいろいろ経験して前向きな人になりました(笑)」














