「AIに負けない読解力」を測るテストは、なぜ生まれたのか
新井は数学者だが、2011年から国立情報学研究所(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構)を中心とするプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」の推進者として、通称「東ロボくん」と呼ばれるAIを2021年度には東京大学に合格させることを目標としていた。しかし、AI的な文章の読み方・書き方では「東京大学の入試には絶対に合格できない」として2016年にプロジェクトを凍結した。
AIは、人間がしているとされるように言葉の「意味」や「常識」を理解しているわけではない。蓄えられた膨大なデータに基づき、統計的な「パターン認識」で確率的に正しそうな答えを出力する。
小説における登場人物の心情把握などが必要な国語や英語において、「暑い天気のなかを歩いてきたから、○○な飲み物を頼んだ」という問題があったとしよう。当時のAIには「暑いから冷たいものが欲しい」という人間の常識がないため、誤答してしまっていた。
だから、意味や常識を求められる東大の入試に受かることは不可能だ——というのが新井の主張だった。
そして多くの人間の生徒が、AIのような情報処理のしかたである「キーワード拾い読み」やパターン認識で問題を解いている点を批判した。東ロボくんより国語のセンター試験(現・大学入試共通テスト)の点数が低い高校生でも、いわゆるMARCHレベルの私立大学(明治・青山学院・立教・中央・法政の各大学。偏差値はおよそ55.0〜67.5程度とかなり幅がある)に入れる現状は、高校生の読解力が崩壊しているとみなさざるをえない、と。
RSTでは、多くの受検者が「係り受け」や「同義文判定」でつまずきが見られた。
つまり主語や述語、修飾と被修飾の関係といった「文の構造」を正しく把握する力がない。また、2つの文が論理的に同じ意味を表しているかどうかを理解できない子どもが少なくなかった。この結果から、数学や理科の学力不振の原因も、数理能力以前の「読む力」にある、と新井は論じた。
そしてRSTのスコア向上には、文法構造を意識的に解析するトレーニングや、用語の定義と具体例を往復するような精読の訓練が不可欠だと言う。













