教科書が読めない中高生はAIに負ける?
2019年末、PISA(OECDが3年ごとに実施する15歳を対象とした国際学習到達度調査)2018年調査の結果が発表され、日本は読解リテラシーのランキングで11位(OECD加盟国中の順位。全79の参加国・地域のなかでは15位)に下がった。
これが話題となる少しまえに、また別の「読解力」論争があった。
数学者の新井紀子が『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(2018年)で「日本の中高生は教科書を文字どおり読む能力がない」と主張したことに端を発する議論である。
新井の著書で言われる「読解力」とは「文書の意味内容を理解する」「中学校の教科書の記述を正確に読み取ること」だ。「行間を読む」「登場人物や書き手の気持ちを想像する」といったものではない。文章をリテラル(「文字どおり」の意味)に理解する能力のことだ。
これはPISA型の読解リテラシーとは違う。新井はこういう意味での読解力についての調査と分析を実施した。
その結果、日本の中高校生の多くは、選択式問題に答えられる程度の表層的な知識は豊富かもしれないものの、中学校の歴史や理科の教科書程度の文章を正確に理解できない、と結論づけている。このテストが、リーディングスキルテスト(RST)である。
RSTでは、文章の情緒的な解釈を排除し、論理的・構造的な読解に特化していると謳っている。具体的には以下の6分野で構成される。ちょっとややこしいが、列挙する。
・係り受け解析:文の構造(主語・述語、修飾・被修飾の関係)を正しく把握する力
・ 照応解決:指示代名詞(これ、それ)や省略された主語が何を指しているかを特定
する力
・ 同義文判定:2つの文が論理的に同じ意味を表しているか(パラフレーズ)を判定する力
・推論:文中の情報と常識や既有知識を用いて、論理的に正しい結論を導き出す力
・イメージ同定:文章の記述と図表・グラフの内容が一致しているかを判断する力
・ 具体例同定(辞書、理数):定義文を読み、具体的な事例が定義に当てはまるか分類する力
新井は2025年の著書『シン読解力』(東洋経済新報社)以降、RSTで測定する能力のことを「シン読解力」と呼んでいる。本書でもPISA型読解リテラシーなどと区別するために、シン読解力と呼ぶことにしよう。
RSTの実施主体は、新井が代表理事・所長を務める、一般社団法人教育のための科学研究所。テストの対象者は、小学校高学年から社会人までとしている。
RSTの開発に至った経緯はこうだ。













