“できない芸人”はライト層に向けた企画?

というのも、「運動神経悪い芸人」や「絵心ない芸人」、「ビビリ-1グランプリ」、「踊りたくない芸人」といった企画は、通常の深夜枠だけでなく、ゴールデン帯の大型特番でもたびたび放送されてきた。

つまり制作側にとって、こうした“できない芸人”シリーズは、コアな『アメトーーク!』ファンだけに向けたものではなく、普段番組を見ないライトな視聴者にも届けやすい“ゴールデン向け”の鉄板コンテンツなのではないだろうか。

マニアックなテーマについて芸人たちが深く語り合う通常回とは違い、予備知識がなくても、画面を見れば一目で面白い感じがする。子どもから大人まで説明なしで笑える分かりやすさこそ、この企画の強みだ。

2夜連続で三島のダンスをフィーチャー(画像/『アメトーーク!』公式SNSより)
2夜連続で三島のダンスをフィーチャー(画像/『アメトーーク!』公式SNSより)

また、今回の「踊りたくない芸人」では、ただ芸人の下手なダンスを流しているわけではない。

芸人が課題曲を踊る際には、両脇にプロダンサーを配置して動きの違いを際立たせる。リプレイでは「安定のバタつきで×」「ただ暴れていただけなので×」などとナレーションを加え、本人が意図していないであろう細かな動きまで拾って笑いに変えていく。

最後に挑戦したマイケル・ジャクソンの『BAD』では、セットやバックダンサーの衣装まで当時のミュージックビデオを再現。芸人たちがうまく踊れた部分だけをつなぎ合わせて一つの作品に仕立てたあと、「リアルなBAD」としてNG版も放送した。

出演者の“できなさ”を、編集やナレーション、セットまで総動員してエンターテインメントに変換する。そこには、長年バラエティを作り続けてきた『アメトーーク!』ならではの演出力がある。

問題は、その演出が強くなりすぎたときだ。

最初は純粋に「できない姿」がおかしかったものが、回を重ねるほど制作側も笑いどころを熟知し、出演者側も「何をすれば笑いになるのか」を理解していく。さらに強い動きやリアクションが求められるようになれば、視聴者から「そこまでやると、さすがにわざとでは」と見えてしまう。

いわば、長寿企画ならではの“演出のインフレ”である。

とはいえ、すべてを演技だと決めつけるのも違う。