「くよくよしても始まらんで」――111歳まで生きた水野清隆さん

2026年2月8日、111歳で亡くなった水野清隆さん。静岡県磐田市で暮らし、2024年8月から亡くなるまで国内の男性最高齢者だった。

水野清隆さん(撮影/集英社オンライン)
水野清隆さん(撮影/集英社オンライン)

1914年、大正3年生まれ。二・二六事件、太平洋戦争、戦後復興、高度経済成長――激動する日本の100年以上を実際に生き抜いた。

晩年の生活は驚くほど規則正しかった。朝は6時ごろ起床。朝・昼・晩の3食を欠かさず、さらに午前と午後にはおやつを食べる。カステラやバームクーヘン、饅頭など甘い物も好んだ。

108歳ごろには白内障で両目が見えなくなったものの、家族と自宅で暮らし、相撲などスポーツ中継を楽しみにしていたという。

そんな水野さんに長生きの秘訣を尋ねると、答えは明快だった。

「何事もくよくよしないことだね。そして、ストレスをためんこと、それが一番!」

そして、こう続けた。

「くよくよしても始まらんで、すぐ忘れることだ」

その言葉には、111年という人生の重みがある。

20代には近衛兵として勤務し、1936年の二・二六事件を経験。その後は戦争にも従軍した。乗っていた船が攻撃されるなど、生死に関わる経験もしたという。

しかし90年近く前の戦争について尋ねると、

「いつまでも記憶しとくもんじゃないで」

と語った。

もちろん戦争の歴史を社会として忘れるべきだという意味ではない。水野さん自身が人生を生き抜くうえで、過ぎたことにとらわれ続けない姿勢を貫いてきたことがうかがえる。

人生で一番楽しかった時代については、戦争ではなく、戦後に家族とともに暮らし、働いた日々を振り返った。

三食をきちんと食べ、甘い物も楽しむ。好きな相撲を聞き、そして嫌なことをいつまでも抱え込まない。

「ストレスをためんこと、それが一番!」

111歳まで生きた水野さんが遺した飾り気のない言葉は、年齢を問わず、日々を生きる私たちにも響く。