ぺちゃんこになった家、残った家、何が違うのか

地震で損壊した家屋 写真/共同通信社
地震で損壊した家屋 写真/共同通信社

八代方面へ進むと、景色は変わった。古い家がぺちゃんこになっている。2階が1階を押し潰し、屋根だけが地面に置かれたような家もある。壁がなくなり、食器棚や布団、仏壇が道路から見えた。

家を失うとは、財産を失うだけではない。人に見せる必要のなかった暮らしまで、外へさらされることである。その隣で、新しい木造住宅は立っていた。同じ道にあり、同じ揺れを受けたのに、結果がまるで違う。

これは今回だけの話ではない。2016年の熊本地震後の調査では、旧耐震基準の木造建物の倒壊率は28.2%、1981年から2000年の基準では8.7%、2000年以降では2.2%だった。

古い家は、見た目が立派でも人を守るとは限らない。太い柱や重い瓦屋根が、倒れた瞬間に凶器へ変わる。耐震性が足りないと分かった家は、建て替えられるなら壊すべきである。

難しいなら、壁、柱の接合部、基礎まで含めて補強しなければならない。「昔からある立派な家だから大丈夫」は、震災のたびに否定されてきた。

汗で軍手が濡れ、ほこりが腕に貼りつく

八代では、家の前に出した畳や家具が強い日差しに焼かれていた。

割れた瓦を踏む音、重機の低い音、発電機の音が続く。住民は大声で嘆くわけではない。黙って手を動かし、数分たつと日陰へ入る。水を飲み、また戻る。その繰り返しである。

倒壊した鳥居(撮影/集英社オンライン)
倒壊した鳥居(撮影/集英社オンライン)

汗で軍手が濡れ、ほこりが腕に貼りつく。家の中から物を1つ運び出すだけでも、平時の何倍も時間がかかる。

声をかけると、暑さで思うように作業が進まないけど、雨が降る前に、台風が来る前に一定の整理をしなくてはいけないということだった。

被災地の暑さは、被害そのものの一部である。家が残っても、断水と停電で冷房が使えなければ住み続けられない。避難所へ行かず車で寝れば、エアコンのためにエンジンを回し、ガソリンを減らす。切れば眠れない。昼の片付けで消耗し、夜も体が休まらない。翌朝には、前日より少ない体力で同じ作業を始めることになる。

熊本市では私が入る前日の8月3日に40.3度を記録した。4日も36.8度、5日も38.1度だった。