古びるどころか逆にリアリティを増して
本当の表現者はいつだってぎりぎりのところで、しばしば恐怖や絶望感におののきながらも、なんとか自らを奮い立たせて新しい作品に立ち向かっている。だからこそ、身近で友達だと思っていた人たちに裏切られた時のやるせなさと無念が、しばらくは消えなかったのだろう。
『COVERS』はその後、RCサクセションの古巣だったキティレコードが、8月15日の終戦記念日にアルバムをリリースすることになった。発売中止の騒ぎがアルバムの宣伝に役立ったことで、バンドにとって初めての1位を獲得するという結果がもたらされた。
ある音楽専門誌は当時、「明日なき世界」の歌詞を引用してこのように絶賛した。
『COVERS』の清志郎は怒っている。それは血の涙を流さんばかりの怒りだ。「世界が終わるなんて嘘だろ?」と叫ぶ清志郎は、最大の「敵」を見つけたのだ。だから88年のRCがこんなにも危うくて熱い。よみがえったゴジラの大進撃を見るようなとにかく痛快な1枚だ。大推薦盤。(「シンプジャーナル」)
その一方で、ある文芸評論家が、アルバム自体をあからさまに非難した原稿を寄稿していた。
このLPはすべて、60年代ポップスの替え歌なのだ。こんなへたくそな歌手に、これほどつまらん歌詞をつけられてリメイクされていると知ったら、ディランもレノンもアダモも、「ポップの魂」の名にかけてきっと怒り狂うだろうし、実際、彼らの歌声とともに思春期を送ったわたしなどは、怒りを越えてひたすら赤面してしまった。(「朝日ジャーナル」)
それから40年近い年月が過ぎて、この乱暴な発言はもちろんすっかり色褪せて忘れ去られてしまった。2009年に忌野清志郎が逝ってしまった今もなお、残された歌は多くの人に聴かれ続けることで、彼のメッセージを後世に伝えている。
「これほどつまらん歌詞」と罵倒された歌詞は、古びるどころか逆にリアリティを増しているのだ。
文/TAP the POP、佐藤剛
参考
https://www.tapthepop.net/song/34738
https://www.tapthepop.net/extra/34766
引用/ロックン・ロール研究所編『生卵 忌野清志郎画報』(河出書房新社)














