「東京から機能を移せば日本が成長する」という証拠は?

東京一極集中も、政治がつくった事故ではない。企業と人が集まる方が、取引先を探しやすく、人を採りやすく、専門家に会いやすく、鉄道や通信設備を多くの利用者で共有できるから集まった。

内閣府の「地域の経済2012」では、事業所密度が高い地域ほど労働生産性が高く、2001年の都道府県データでは、事業所密度が2倍になると労働生産性が約12%上がる関係が示された。

RIETI(独立行政法人経済産業研究所)の森川正之氏による1990~2009年の賃金データ分析でも、人口密度が高い都市ほど、知識の波及や企業と労働者のマッチングを通じて生産性が高まる結果が出ている。

「東京から機能を移せば日本が成長する」という証拠はない。確認できるのは、密度に生産性上の利益があり、分散にはその利益を失う費用があるということだ。市場が選んだ集中を税金で逆向きに動かすなら、効果を証明する責任は分散を求める側にあろう。

しかも、官庁だけを移しても企業は自動的についてこない。取引先、人材、大学、金融、文化、生活サービスまで重なって初めて集積は働く。

役所を数棟建て、補助金で職員を動かす政策は、都市を育てる政策ではない。東京の厚みを少し削り、大阪に薄い行政機能を足すだけなら、両方の効率を落とす。

巨大な第2霞が関も、唯一の副首都という看板も要らない

東京・霞が関
東京・霞が関

大阪を成長させるなという話ではない。大阪は規制を減らし、税を軽くし、交通と国際業務を強くし、民間企業が自分の金で集まりたくなる都市を目指せばよい。東京の官庁を分けてもらわなければ成長できないという発想は、むしろ大阪を見くびっている。

現実的な形は単純である。平時の政治、行政、金融、企業活動は東京に集め、防災投資を続ける。官邸と霞が関が止まった直後は立川で政府を動かす。首都圏全体が長く使えない場合に備え、名古屋、大阪、広島、福岡などへ小さな遠隔拠点を複数置く。大阪はその1つで十分ではないか。

巨大な第2霞が関も、唯一の副首都という看板も要らない。

副首都の看板を争う政治より、既存設備をつなぎ、実際に動かす方が国家には重要である。副首都を新しく造るのではない。すでにある立川を完成させればよい。防災では初動が速く、経済では東京の集積を壊さず、財政では重複投資を抑えられる。大阪副首都論より、よほど地に足がついている。

文/小倉健一 写真/shutterstock