AIに解決できない「痛み」が目立ってきている
山本 生活者はAIに人格を見出して、コミュニケーションしはじめています。「AIと恋愛する人」や「自分のカウンセリングにAIを使う」といった現象は、今が過渡期だから起こっているのでしょうか?
益田 いや、今後もずっと一定数はそうなると思いますよ。AIに悩みを相談すること自体は、別に悪いことではありませんから。
山本 なるほど。一方で、一部の科学者たちは「AIの普及が『人類の家畜化』につながるのではないか?」と警鐘を鳴らしています。様々な場所にAIを用いたプロダクトが普及し、AIに頼ることが当たり前となる社会の中で、人間が主体性を持ってAIと付き合っていくためには、どのような心構えや距離の取り方が必要になってくるのでしょうか?
益田 それを考えていくために、まずは実際の臨床現場で感じていることからお話しします。私はもともと「AIによって物事を整理して知識を補えば、人間はもっと安心できるようになるのでは?」と考えていたんです。ただこの1年で、実際はそうなる人とならない人がいることに気づきました。
山本 著書の中で、AIに質問をさせて自分史をつくって自己理解を促すなど、AIメンタルケアの手法を多数ご紹介されていましたね。
益田 そうですね、症状が軽い場合はそれで良くなっていくケースもあります。また、発達障害は部分的な知的能力障害と言えるので、AIが苦手な領域をカバーしたり補助してくれたりしています。そうなると今度は、「パーソナリティ機能」が低い「パーソナリティ障害」と呼ばれる人たちが目立つようになってきました。こういった人はAIでもフォローしきれないんです。
山本 パーソナリティ機能、パーソナリティ障害というのは?
益田 そもそも精神医学の世界で、知性は「認知能力」と「非認知能力」の2つに分けられます。認知能力はいわゆるIQなど数字で表せる能力です。これが低いと境界知能や知的障害、能力の中で凹凸があると発達障害と診断されます。
もう1つが非認知能力です。性格や我慢強さなどの学力では測りにくい心の強さを指し、「パーソナリティ機能」とも呼ばれます。さらに、このパーソナリティ機能には「自己機能」と「他者機能」の2つがあります。
自己機能は「自分とは何か」「自分のやりたいことは何か」が分かっているかどうかで評価されます。簡単にいうと、他人から言われてすぐ気持ちが変わる人は自己機能が低い、何を言われてもあまりブレない人は自己機能が高い、ということです。
他者機能は「他人の気持ちが分かる」「尊敬できる」「親密感を持てる」などが基軸になります。ポイントは、仲間や好きな人の気持ちだけではなく、嫌いな人や敵の気持ちもなんとなく理解できることですね。こういったパーソナリティ機能が低いと、人間社会の中で騙されやすいし、嫌な思いをするから生きづらいわけです。













