カギは「ラーメンと甘味」の独自性
ソフトクリーム、クリームぜんざいなど、スイーツとラーメンを一緒に楽しむ文化はスガキヤならではだ。
東海地方では「ラーメンを食べてソフトクリームで締める」がおなじみの楽しみ方になっている。実はこの部分こそ、首都圏で差別化できる可能性を秘めている。日高屋は食事とちょい飲み需要に特化している。幸楽苑も日常使いの低価格ラーメンチェーンとして競合する。
しかしスガキヤは、軽食需要と喫茶需要の中間に位置する。例えばショッピングセンターでの休憩。学校帰りの学生。子ども連れのファミリー。午後のおやつ利用。
こうしたシーンを取り込めれば、単純なラーメンチェーンとの競争から一歩抜け出せる。
スガキヤは「ラーメン店」というより、「ラーメンと甘味のファストフード業態」と捉えた方が実態に近い。
関東進出の成否は、この独自性をどこまで伝えられるかにかかっている。
今回のスタート地点が神奈川県というのも興味深い。東京ではなく神奈川。商業施設への出店余地も大きく、同時に、東京の超激戦区でいきなり戦うよりもブランドを育てやすいからだろう。
まず神奈川で成功モデルを作る。そこでオペレーションや商品戦略を磨き、徐々に東京へ広げていく。そんなシナリオが見えてくる。
問題は、50店舗という数字にこだわりすぎないことだ。外食業界では急拡大が失敗につながる例も少なくない。
むしろ重要なのは、最初の10店舗をどう定着させるかである。外食産業の歴史を見ると、一度撤退した地域へ再挑戦して成功した例は決して多くない。しかし、だからこそ面白い。
20年前のスガキヤは、関東に合わせようとして失敗した。今回のスガキヤは、おそらく逆だ。関東に迎合するのではなく、「名古屋のスガキヤ」をそのまま持ち込もうとしている。
創業80周年。新社長の就任。1000店舗構想。海外展開への意欲。そのすべての象徴が、今回の関東再進出なのだろう。
首都圏のラーメン市場は甘くない。
それでも、ラーメンフォークを片手に育った名古屋人たちが愛するあの味が、再び関東で受け入れられるのか。スガキヤの首都圏リベンジは、単なる出店計画を超えた地域ブランド全国化の実験として注目していきたい。
取材・文・撮影/井手隊長













