「息子さんをお父さんが自転車の後ろのチャイルドシートに乗せていました」

妻と死別してから約10年。吉伊容疑者は1人で長男を育ててきたとみられる。そして1年前に事件現場となった成田市のアパートへ引っ越してきたという。

「喧嘩をしているような怒鳴り声や、何かを叩くような異常な音は、私がいる限り一度も聞いたことがありませんでした。お父さんは特に仕事をされていなかったようですが、詳しい事情まではわかりません」(近隣住民)

親子が住むアパートは最寄り駅から徒歩30分ほどの場所にあり、間取りは2DK。家賃は5万円前後だという。同じアパートに住む外国籍の女性住民も、親子の様子についてこう振り返る。

「時々、子どもが学校から帰ってくる時に顔を合わせると、二人とも『こんにちは』と礼儀正しく挨拶をしてくれました。親子仲はとてもハッピーで、仲が良いように見えました。喧嘩の声や子どもの泣き声が聞こえたこともありません。洋服などの身なりもちゃんとしていましたし、親子で普通に食事をしている様子でした」

アパートの通路にあたる共有スペースには、吉伊容疑者が長男を乗せるために使っていたとみられる荷台付きの古い自転車が残されている。別の近隣住民はこう言葉を漏らした。

「息子さんの自転車は、ここにはありませんでした。あの子は自分の自転車を持っていなかったと思います。体の大きくなった息子さんを、お父さんが自転車のチャイルドシートに乗せていました」

容疑者の自転車(撮影/集英社オンライン)
容疑者の自転車(撮影/集英社オンライン)

一方、長男が通っていたのは、アパートから約5キロ離れた場所にある成田市内の小学校だった。近所の女性住民は通学事情についてこう語る。

「てっきり近くの小学校に通っているものだと思っていました。でも、引っ越し前に通っていた小学校へ、そのまま通学していたようです。息子さんは高学年だし、ここに引っ越してくる前の学校から、どうしても移りたくなかったのではないかという話でした」(同前)

アパートから小学校までは約5キロ。吉伊容疑者は雨の日でも雨具を身につけ、毎日、自転車で長男を送り迎えしていたという。

「挨拶をすれば、お父さんも息子さんも『おはようございます』と、ちゃんと返してくれる普通の方たちでした。それだけに、どうしてこんな悲しい結末になってしまったのか。子どもに罪はないのにと、本当に複雑でやりきれない気持ちでいっぱいです」(前出)

長男が通っていた小学校では、事件を受けて1日に急きょ保護者会が開かれたという。学校側は「こちらから答えることはできない」と言葉を濁した。

母親を亡くしてから約10年。父子は支え合うように暮らしていたように見えた。毎日5キロ離れた学校へ送り迎えを続けていた父親の胸中で何が起きていたのか。警察は事件に至った経緯を慎重に調べている。       

※編集部注:道路交通法は自転車の2人乗りを原則禁止しています。各都道府県の公安委員会規則により、16歳以上の運転者が幼児用座席を設けた自転車に「未就学児」を同乗させる場合のみ例外的に認められています。

供えられたお花(撮影/集英社オンライン)
供えられたお花(撮影/集英社オンライン)
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班