プラケースに土で埋められた赤ん坊

このように、コンクリートですら死体を完全に隠し切ることの難易度は高いのですから、他の物質ではさらに発覚がたやすくなります。

私が知っている事例のひとつとして、一般家庭のベランダからプラケースに土で埋められた赤ん坊の死体が発見されたことがありました。嬰児殺しの犯人として死体遺棄容疑で逮捕されたのは、その家で暮らす両親であり、発見・通報したのは彼らの息子でした。

どのような事情があって殺害したのか、なぜ土に埋めるという安易な隠し方しかしなかったのか、理由は明らかにされませんでしたが、殺害された赤ん坊をその兄が発見してしまうという非常に痛ましい事件として記憶に残っています。

死体を土に埋めても、腐敗には長い時間がかかります。死体を土に埋めるのは、証拠隠滅と呼ぶにはあまりに稚拙な隠蔽であり、「死体をそのまま一時保管している」状態にすぎないと考えるほうが正しいでしょう。

また、白骨化した死体からもDNAは検出可能ですし、性別や年齢、身長、手術歴などの病歴など、さまざまな情報を読み取ることが可能です。

多くの人はそんな心配をせずに一生を終えるとは思いますが、死体という物的証拠を完全に消し去ることは相当に難易度が高いことを、頭の片隅に入れておいてもいいかもしれません。

文/飯野守男 写真/shutterstock

法医学教授が教えている 死体の授業
飯野守男
法医学教授が教えている 死体の授業
2026/5/26
1,870円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4868010579

「交通事故よりお風呂が危ない」
ドラマ監修も務める法医解剖医が教える
あっ! と驚く死体の話

解剖料は1回〇万円、医療ミスを暴いた解剖例など、
知られざる法医解剖医の仕事から、
「舌を噛んで自殺はあり得るのか?」
「刺されたらナイフは抜くべきか?」といった
ドラマやマンガで目にする描写のウソ・ホントまで。

法医学者だから知っている実際の解剖事例をもとに、思わず人に話したくなる
死体のリアルな知識がつまった1冊です!

■内容
第1章 解剖室へようこそ ――死体はこうして切り開かれる
死体はどのように解剖されていくのか
死体の「解剖料」はどこから、いくら払われるのか?
解剖が最も大変なのは「めった刺し」事件
刃物をもった人間に襲われたら「胸」と「首」を守れ
やわらかい臓器、固い臓器
高温多湿の日本でミイラ死体はできるのか
口の中にウジがびっしり詰まった腐敗死体
法医解剖医の解剖器具リスト

第2章 解剖しないとわからない 「死因」のケーススタディ
Case1「入れ歯で死ぬ」
Case2「風呂で死ぬ」
Case3「3食フライドポテトで死ぬ」
Case4「誤飲で死ぬ」
Case5「便秘で死ぬ」
Case6「病院嫌いで死ぬ」
Case7「鍼で死ぬ」
Case8「夫婦で死ぬ」
Case9「溶けて死ぬ」
Case10「山で死ぬ」

第3章 ドラマや漫画で描かれる「死体」の嘘
Q.「喉笛を掻っ切る」と本当に血が勢いよく吹き出るのか?
Q.舌を噛み切っての自殺は本当にできる?
Q.死体から目玉をくり抜けるか?
Q.「肺に穴が開いて、少しずつ窒息死するのが最も苦しい死に方」は本当?
Q.ナイフで刺された! すぐに抜くべき?
Q.銃で撃たれた! でも弾が貫通していれば、死ぬ可能性は低い?
Q.死体を隠すには、コンクリート詰めがいい?
Q.「重要な手がかりを握ったまま死んでいる」死体は実在するか?
Q.雷が落ちると、丸焦げになって死ぬ?

第4章 死体と向き合うことで見えてくる世界
『アンナチュラル』にハマって法医学を専攻、テレビ局に入社した卒業生
「死体は得意ですか?」「いいえ、苦手です」
医学部生だって解剖で倒れる
疑い深い人間ほど、法医学者に向いている
解剖は『答え合わせ』ができる
最短ルートで教授になりたい人は法医学が穴場?
死体の数が「解剖格差」に直結している日本
嬰児殺が多いインドネシアの法医学事情
死んだ肉体はどのように腐っていくのか
死体の腕を切る、人工呼吸器を外す、とことん合理的なオーストラリア
法医学者に完全犯罪は可能か?

amazon