どうしても岸田戯曲賞が欲しかった

――おふたりの同時受賞が決定してからひと月半ぐらい経ちましたが、選考会当日の様子を振り返ってもらってもいいでしょうか。

大石
 私は初めてのノミネートだったので、さすがに受賞はないだろうなって思ってたんです。でも当日になって、もう一回冷静になってほんまに可能性ないんかって考えたときに「いや、獲るんちゃうか」っていう気持ちが謎に湧き上がってきて(笑)。

蓮見 おお、頼もしい。

大石 と同時に、もし獲れなかったらめちゃくちゃ腹立つやろうなとも思ったんです。だってほら、自分から戯曲を応募してノミネートされたわけではないじゃないですか。

蓮見 公募じゃないですもんね。こっちからすると勝手に候補に選ばれて、勝手に受かったり落とされたりするわけだから(笑)。

そこがお笑いの賞レースとは全然違うっていうか、せっかく決勝に出場したのに指くわえて結果を待つしかないっていう。僕はそれで過去2回落ちてるので、大石さんのやり場のない気持ちよくわかりますよ。

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大石 びっくりしますよね、ノミネートされてからは何もできない(笑)。受賞を逃したら、たぶん自分は腹立たしさでとんでもないことになる。そう思うと、だんだん居てもたってもいられなくなってきて。

私、近所のでっかい墓地を散歩するのが好きなんですけど、墓に行けばちょっとは落ち着くかもなと思って、それでうろうろ歩いてたら逆に本当に受賞できなかったら絶対許せないっていう気持ちが昂ってくると同時に、自分はこんなに権威に振り回される人間なのかと悔しくて涙が出てきちゃって。そのまま知らない人の墓の前でずっと泣いてました。

蓮見 いやいや、怖いですよ。

大石 でも、受賞の電話がきた。そこで白水社の方に「単独ですか?」って聞いたんです。私の戯曲は一人芝居だし極端な作風だという自覚もあるから、もし受賞するとしたらバランス的に正反対の作品も選ばれるだろうなと思って。

すると「ダブル受賞です」っていう返事だったので、じゃあ蓮見さんとのダブル受賞かなと思ったのを覚えています。

――一人芝居の戯曲が岸田賞を受賞したのは『よだれ観覧車』が史上初だそうですね。東京と京都で合計3回上演され、コアな演劇ファンの絶賛を浴びました。一方の『ロマンス』はダウ90000の第7回演劇公演として全国5か所で上演された、エンタメの粋を尽くしたコメディです。まさに好対照といえる2作が同時受賞になりましたね。

蓮見 僕は3回目のノミネートなんで、これでまた獲れなかったら本気でキレ散らかしてやろうと思ってたんですよ。なので、当日は僕も不安定な状態でイライラしてました。「頼むからくれよ」って(笑)。

でも、こっちは一大事なのに、世間的に岸田戯曲賞が話題になってたかというと全然だったじゃないですか。そのことにも腹が立ってきて、もう世界中で自分だけがソワソワしてるような気分になっていったんですよね。