「いいねより保存」変化した若者の承認欲求

一方で、近年の若者のSNS利用を考えるうえでは、BeRealのようなアプリの存在も無視できない。

BeRealは、1日に1回、ランダムな時間に通知が届き、その瞬間の自分の様子を前後のカメラで同時に撮影して投稿するSNSだ。

加工や作り込みを前提としないリアルな日常を共有するアプリとして、若者の間で広がった。

酒井さんは、こうしたSNS環境も顔隠し投稿の定着に影響していると見る。

「加工ができない、作り込めないからこそ、顔をそのまま出すことへの抵抗も生まれます。投稿はしたいけれど、無防備な顔を見せたくはない。

そうした場面で、少し顔を隠す、横を向く、スマホで顔を覆うといった行動が、より自然な選択肢になっていくのだと思います。

投稿はしたい。楽しかったことも残したい。けれど、自分の顔や交友関係を必要以上に判断されたくはない。

顔隠し投稿は、そうしたSNS時代の感覚の中で定着してきた、見られ方を調整するためのリテラシーでもあるのだと思います」

(写真/さーちゃん提供)
(写真/さーちゃん提供)

では、顔を隠すほど“見られること”に慎重でありながら、なぜ彼女たちはSNSに写真を投稿するのか。

「2020年の分析で印象的だったのは、日本の若者はSNSを“自分を見てほしい場所”というより、“誰かの参考になるものを共有する場所”として捉える傾向が見えたことです。

もちろん、SNS上で常に人から見られ、判断されているという感覚は、日本に限ったものではありません。ルッキズム的な圧力は、海外にもあります。

ただ、日本の場合は『私を見て』『私を承認して』という出し方よりも、『この場所が可愛い』『この服が参考になる』『この世界観を見てほしい』という形で承認を得ようとする傾向が強いように見えます。

たとえば、自分の顔写真を投稿しても保存数が数件しかなかったのに、安くて可愛い洋服屋さんの写真を投稿したら300件以上保存された、という話がありました。

そこで本人は、『私の顔なんて誰の役にも立たない』と感じるわけです。

つまり、『わたしを見て』という承認欲求がなくなったわけではなく、世界観や情報、雰囲気を通して表現しようとしている。

いいねをもらうより、保存されることの方が大事だという意識も、そこにつながっていて、承認欲求の表れ方が変わっているのだと思います」(同)

(写真/さーちゃん提供)
(写真/さーちゃん提供)

顔を隠すことは、単に「写りたくない」という拒否ではないようだ。

見せたいものを選び、見られたくないものを守りながら、それでも誰かとつながっていたい。若者たちの顔隠し投稿は、SNS時代を生きるためのリテラシーになっているのかもしれない。

(写真/さーちゃん提供)
(写真/さーちゃん提供)
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取材・文/鮫島りん 集英社オンライン編集部ニュース班