「今でも自分に自信はないです。馬乗りもうまくないし」

――日本のトップジョッキーですから、運動神経も抜群だと思っていたら、中学時代、野球部で補欠だったというお話が意外でした。

とにかくバッティングがダメだったんです。3年生のときはキャプテンなのに補欠でした。

――それでも当時の監督さんから言われた「お前が10人いたら強いチームになる」という言葉が印象的でした。

それを言われたときには、「いや、補欠ですけど」みたいな感じだったんですよ。でも、普段から、人がやらないような球拾いや練習後の片付けなども手を抜かず、一生懸命にやっていたんです。「勝負の神様は細部に宿る」じゃないですけど、そういうのは今の騎手人生にも生きてるなっていうのはありますかね。

――ご自身で、野球の才能はあまりないのかな、と感じていらっしゃいましたか。

正直、才能ないなとは思っていましたけど、それでも「いつかはレギュラーになるぞ」とか、「なれるんじゃないかな」と思っていて、それを疑うことはなかったですね。今、思えば勘違いなんですいけど(笑)、そういうのは多かったですね。

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――書籍のなかでは「自分に自信がない」という記述も何度も出てきますが、トップアスリートの方が書かれる本としては、すごく意外でした。

どんな世界でも、昔から「自信を持て」とかって言われるじゃないですか、でもその「自信」っていうのが僕自身はよく分かってなくて。馬乗りだって、自分では今でもまったくうまいと思ってないんです。ほかにうまい人なんていっぱいいるし。

――ご自身の騎乗フォームが嫌い、とも。

はい。一番はもう、背中が丸まっていて、見た目もかっこ悪いなって思うんですよね。かっこいい人ってピシッと背中を張って乗るんですけど、それができなくて。もうずーっとそれでやってきていて、我流ができちゃってたから、なかなか直しきれない。

なので、もうそこは諦めて、馬へのコンタクト、アプローチを高めていきたいなっていうふうに切り替えました。

――もう一つ驚いたのが、「調教が苦手」ということです。うまく乗れない、と。我々からすると信じられないのですが。

馬乗りが上手じゃないので、どうしても調教もうまく乗れないんですよ。ただ、調教でうまく乗れない馬も、レースではうまく乗れたりするんですよね。

調教ってペースがやっぱりゆっくりなんですけど、レースだとそのゆっくりなペースっていうのはないので。そのゆっくりなペースで走らせ続けるのが、下手くそなんでしょうね。

馬ってキャンター(三完歩)とギャロップ(四完歩)で完歩が違うんですよね。そこでの乗り方の違いだと思います。リズムが違うので。でも、レースのほうが苦手じゃなくて良かった、とは思います。