薬の乱用は行政も警察も緊急の対応をしてくれない

しかし、第三者としてはどうしても「どうすればよかったか」を問うてしまいたくなる。Aさんは答える。

「私が服用していた薬を娘の手が届かないところに置いていればよかったのかもしれない。でも16歳の娘の手が届かない所ってどこでしょうか。まさか私に隠れて飲むだなんて思いもしませんでした。

なんと言っても私は当時、孤立していました。行政や医療機関や学校、どこに行っても一時しのぎ的な対応だけで、根本的にじっくりと対応してくれるところはどこにもありませんでした。

若者に薬が処方されやすかった当時の時代背景もあり、家庭で薬が手に入りやすい環境もあったし、薬の依存性への認知不足など複数の要因が絡み合い、問題が深刻化しやすい構造があったのだと思います。

何より、未成年の若者が一人で受診した時に、本人の希望があるからと多量の睡眠剤や抗不安剤を処方していた医師が、一人ではなく、何人もいたことも問題です。今では何か所もの病院で薬を処方してもらいにくくなりましたが、娘が高校生の時は、何か所も病院で処方してもらってたくさんの薬を手にすることができたのです」

写真はイメージです(PhotoAC)
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Aさんが薬物依存に陥った娘を振り返って、社会が「もっとこうなればいいのに」と思うことはいくつかある。

「警察の方が処方薬乱用など家族の問題に立ち入れないことはわかります。でも、一言『ダルクのような自助グループもある』と教えてくださったり、あるいは精神科病院においても、本人の同意がなくても事情に応じて入院できるような制度ができれば、もう少し低い依存度の段階で娘の回復を促すことができたかもしれない、とは思います」

同じような悩みを持つ家族に対して、Aさんはこんな声をかけたいと言う。

「娘は酔っている時やOD直後は傍若無人に振る舞います。でもODで意識が混濁すると『自分はクズだ』『生きててごめんなさい』などと言うときもあり、娘自身も本当につらくて苦しい思いをしているんだということがわかります。本人もやめたいのにやめれない自分のことが嫌になるのでしょう。

依存症は本人の意志だけでどうにかなるものではないですし、家族の愛情だけで治るものでもありません。必要なのは、理解してくれる専門家、寄り添う支援者、安心して弱さを見せられる場所で、それが社会の標準になればと…今もその環境は整ってはいないと思います」

写真はイメージです(写真/PhotoAC)
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ODは依存期間が長くなるほど、Bさんのように成人以降もやめられずに乱用し続けてしまうケースがある。

現在、市販薬の乱用に対してはドラッグストアの薬剤師向けに乱用防止の研修プログラムが実施されたり、客に対して過剰摂取の兆候がないかなどの声かけを行なったりするなど、意識は高まっている。また処方薬については、重複投薬のチェックを強化するなど、対策が徐々に講じられるようになっている。

しかし、何より私たちひとりひとりが家族やパートナー、周囲に注意の目を向けることが大切なのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班