原油高騰で電気・ガス・物流・企業コストまで上がる構造の問題
しかし、今回の中東情勢の悪化を受けた市場の価格高騰については一筋縄では収まらないとの見方もある。前出の江田氏がその懸念を指摘する。
「これまでも地政学リスクで原油価格が急騰することはありましたが、今回は原油だけの問題ではないところが大きいと思います。ホルムズ海峡への懸念に加えて、カタールのLNG拠点にも影響が及んでおり、エネルギー供給網全体への不安として見られています。
さらに今回は、見落とされがちですがヘリウムへの影響も重要です。ヘリウムは半導体やMRIなどに欠かせない資源で、カタールは世界供給の大きな一角を占めています。LNG設備の停止は、原油やガスだけでなく、こうした産業用ガスの供給にも波及します。
つまり今回は、単なる原油高ではなく、エネルギーと産業のサプライチェーン全体が揺れている局面だと感じています」
さらに、今回の状況で改めて浮き彫りになったのが、日本のエネルギー依存構造の脆弱さだ。依存先が偏っているため、同様の危機が起きるたびに価格が大きく変動し、その影響が幅広く波及しやすい。
「今回の問題で改めて感じるのは、日本の課題は資源がないこと以上に、依存先やエネルギー源の偏りが大きいという点です。中東依存が高いため、何か起きると価格上昇がガソリンだけでなく、電気・ガス・物流・企業コストまで一気に広がりやすい構造になっています。
今後のエネルギー政策を考えるうえで、「国産」と「デジタル化」がキーワードになると思います。国産というのは、再エネや原子力、省エネを含めて、海外資源に過度に依存しないエネルギーの比率を少しずつ高めていくことです。
デジタル化というのは、需要と供給をより細かく把握し、電力を無駄なく使い、系統や蓄電池も含めて全体を賢く動かしていくことです。そのうえで、調達先の多角化、再エネと蓄電池の拡大、送配電網の強化、そして安定電源の確保を並行して進める必要があります」(前出・江田氏)
こうした状況を踏まえると、今後求められるのは、目先の価格高騰への対症療法にとどまらず、エネルギー供給の脆弱性そのものを見直していく視点だろう。
再生可能エネルギーの拡大や調達先の分散、送配電網や蓄電池の整備、さらには安定電源の確保を含めた中長期的な政策対応を着実に進めることが、日本経済と国民生活の影響を和らげるうえでますます重要になっている。
取材・文/集英社オンライン編集部













