「子どもを今日明日食べさせるための“最後の手段”だと思っています」

まるで常連客の男性に感謝しているような口ぶりだが、自分の子どもの尊厳を冒しているという意識はないのか。

「その方から『入学式の日にはこのパンツをはいてほしい』とパンツを指定され、それをはかせたことはあっても『写真を送ってほしい』という注文には応じていないし、ウチの住所を知られてもいない。

だから子どもらに身の危険が及ぶことはないと思っています。子どもの尊厳は…子どもを今日明日食べさせるための“最後の手段”だと思っています」

子育てのために高収入の水商売や性産業に従事する母親も少なからずいる。A子は水商売は「自分の近所には子供の預け先がないから無理」だと主張する。風俗は「狭い街なので保護者に会う可能性もある」と考え、一度だけ障害者専用の風俗店に体験に行ったこともあった。

「(風俗業に従事することは)精神的に厳しいと思いました。心身を削り家庭がおろそかになるよりは、娘に悟られないよう下着類を売るほうが良いと思ってしまったのです」

A子は「最近は米が高いので私はここ1年以上、米は一粒も食べていない。子ども達だけに食べさせている。なるべくひき肉料理と麺類で子どもらのお腹をふくらませている」という。

「次女が小学校入学するまであと2年。今の常連客の方にパンツを売り始めてから3年ほどになりますが、さすがにこの2年以内には別の方法で自立したいと思います。変なことをせずに暮らせるように頑張りたい。しっかりと地に足をつけて頑張りたいです」

A子は子どもたちに隠れてこれらの行為を続けている。だが、子どもたちが気づいてないからといって許される行為ではない。これは子どもへの性的虐待ではないのか。

元検事で現在はレイ法律事務所で弁護士の西山晴基氏に聞いた。すると「販売した親御さんや、親御さんから買い受けた者を直接罰する法はない」という。

「こちらは『青少年保護育成条例』にあたる問題で、各都道府県ごとに若干の制定内容に違いがあります。例えば、東京都では2004年にブルセラ規制の文言が盛り込まれました。そこには『青少年から着用済の下着を買い受けてはいけない』や『(青少年から)売却の委託を受けたり勧誘してもいけない』といった文言はありますが、親が売ることは想定されていないため、親への条例違反の罪は問えません。

買った男性側も青少年から買い受けているわけではないので罪には当たりません。2004年当時とまた時代も変わっているため、今後は子どもを代理して売っている親側の規制の文言も追加すべきと強く思いました。それと共に厳しい現状があることも痛感しました」

日本は先進国の中でもひとり親世帯の相対的貧困率が44.5%(2021年度)と非常に高い。生活に困窮するあまり判断力を失った母親がこのような行為に手を染める前に、なぜ行政のセーフティネットは機能しなかったのか。この問題から目をそらすことは許されないはずだ。

A子さんと男性客のやりとり(画像/A子さん提供)
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取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班