「こういう結末しかなかったのかなぁ」

タイトル戦に登場する女流棋士が妊娠した場合、そのまま指すのか、対局日程を延期するのか、あるいは不戦敗にするのか――。母子の安全はもちろん、対局相手との兼ね合いも絡む難題だ。

そこに大きな一石を投じた福間だが、この件に関して、連盟内部では清水市代会長の一年以上前からの対応を疑問視する声が多い。福間と親しい中堅女流棋士が言う。

「福間さんが妊娠を公表したのは2024年8月29日ですが、当時女流棋士担当の理事だった清水さんに、妊娠した際の規定について何度も相談していたんです。でも清水さんは福間さんからの電話を無視するなど、誠意を欠いた対応だったと聞いています」

12月10日記者会見をする福間女流六冠(写真/共同通信社)
12月10日記者会見をする福間女流六冠(写真/共同通信社)
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2025年6月に史上初の女性会長となった清水だが、内部からの人望はあまりない。なぜ会長に選ばれたのか。

「総会ではまず理事を決めて、その後理事会が会長を選ぶ手順です。6月の選挙では理事の立候補者が定数と同じだったので落選者がいない信任投票だったんですが、清水さんの票数は最下位だった。なぜ彼女が会長に収まったかと言えば、前任者の羽生さん(善治・九段)が他の理事候補者たちに“強い口添え”をしたからだとも言われています」(観戦記者)

現場の混乱は深刻だった。福間の妊娠発表の二日後には女流最高峰タイトルの白玲戦七番勝負が開幕。福間は西山朋佳・女流二冠に挑戦したが、この現場でも異常事態が起きていた。主催のヒューリック関係者が明かす。

「我々は当初、福間さんは体調に不安があるので挑戦者が変更になると聞いていました。実際、対局場には代打挑戦者として伊藤沙恵・女流四段が来ていたんです。ところが最終的に福間さんが指す事になった。梯子を外された伊藤さんも気の毒ですし、西山さんも『私は誰と指せばいいんでしょうか』と戸惑っていました」

その後、福間は三カ月間産休を取ることを発表し、連盟は福間が保持していた三つのタイトル戦の日程を休場明けに延期した。一方で福間が挑戦権を得ていた白玲戦と女流王将戦は延期せず進行。福間は体調不良の為、このうち四局で不戦敗となりタイトルを奪えなかった。9月11日には朝日杯将棋オープン戦で片上大輔七段に不戦敗。

夫で元奨励会員の福間健太氏はSNSで「こういう結末しかなかったのかなぁ」と連盟の対応を批判したとも取れる書き込みをしている。

夫の福間健太氏のSNSより
夫の福間健太氏のSNSより