「後手後手の対策の責任は執行部にあるのでは」と声を震わせ……
さらに批判に拍車をかけたのが、室谷由紀・女流三段のケースだ。室谷は8月14日に福間が持つ女流王座の「挑戦者決定戦」まで進出したが、産休を発表して不戦敗となった。福間と同じ時期に妊娠したが、大勝負の舞台に上がれなかったのだ。
しかし女流王座の日程は福間の妊娠によって延期された為、挑戦者決定戦の日程も延期していれば室谷はタイトル戦を指せていた可能性がある。
「今回の件で、改めて室谷さんにも同情が集まっています」(前述の観戦記者)
一連のドタバタに対し、女流棋士たちの不信や疑問は膨れ上がっていく。25年1月23日には女流棋士を集めて羽生や清水らが説明会を行った。
「後手後手の対策の責任は執行部にあるのでは」と声を震わせながら追及する若い女流たちに対し、執行部は押し黙ったままだったと言う。
そして執行部は25年4月、今回問題になった「妊娠したらタイトル戦を指せない」という規定を設ける事で「福間案件」の幕引きを図った訳だが、事態は解決するどころか逆に未曽有のトラブルになってしまった。
この規定は、妊娠したら事実上の不戦敗を意味することから、大きな反発を生んだ。そして12月10日の福間の会見を受けて、この規定は解除されることになった訳である。
福間は独身時代、2023年におこなった「集英社オンライン」の対談で「結婚しても将棋はずっと続けていきたい」「(子育てや家事は)夫婦で助け合いながらって大事ですよね」と語っており、時代に合った女流棋士の“働きかた”を訴えていた。
彼女の思いや行動は正当なものだが、同時にこの問題は、運営側に突き付けられた難題の深さも浮き彫りにした。
自身も三児の母であるタイトル通算十九期獲得の中井広恵・女流六段はこう語る。
「妊娠によって対局機会を失いたくない福間さんの気持ちは痛いほど分かります。一方で運営サイドからすると、このままでは女流タイトル戦の日程調整が非常に大変になる。他の女流との公平性を保つルールを作るのは簡単ではないと感じています」
内外から厳しい目を向けられている連盟執行部は妙手をひねり出せるだろうか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













