「歳末サバイバルの巻」(ジャンプ・コミックス第13巻収録)
今回は、大掃除中の派出所に、借金取りたちが押しかけるところからはじまるお話をお届けする。
借金を取り立てようとするのは亀有商店街の面々。取り立てられるのはもちろん両さんだ。両さんは彼らから金を借りているわけではない。「ツケ」で買い物をしたきり代金を支払っていないのだ。
「ツケ」とは、その場で対価を支払わずに勘定を帳簿に書き付けさせ、あとでまとめて支払いする方式を指す。江戸時代以来の、盆と暮れにまとめて代金を支払う「掛け売り」の名残りだが、これは本来、売り手と買い手の間に信頼関係がないと成立しない。落語などで年末の取り立てがネタになっているが、両さんの場合はその現代版といったところだ。
本作が「週刊少年ジャンプ」に掲載されたのは、1978年の年の瀬。1976年秋に連載を開始してわずか2年後に、『こち亀』鉄板ネタの原型が誕生していたことになる。
その鉄板ネタというのは……「ボーナス争奪戦」。公務員である両さんには、年に二度、必ずボーナスが支給される。両さんのツケがたまっている商店街の面々は、ボーナスから金を取り立てるため、両さんと丁々発止のやりとりを繰り広げるのだ。
本作では麗子や部長が、両さんがツケの金を払えるよう助力しているが、以降のエピソードでは、商店街の人々は自力で両さんのボーナスを手に入れようと奮戦するようになっていく。
亀有の街を縦横無尽に駆け抜けて逃げまくった挙げ句、高層ビルからボーナスを撒き散らすハメになった「ボーナス争奪戦!の巻」(ジャンプ・コミックス第43巻収録)。
部長が預かったボーナスを両さんが必死で我が手に取り戻そうとする「ボーナスプラン!の巻」(ジャンプ・コミックス第48巻収録)。
ボーナスを10万円金貨で受け取った両さんは金貨をとあるところに隠すが、それがまさかの惨劇へとつながる「ボーナス争奪戦!!の巻」(ジャンプ・コミックス第53巻収録)。
両さんがボーナス全額を1枚の古い切手に換え、商店街の人々の追求から逃れようと企む「ボーナス戦線異状なし!の巻」(ジャンプ・コミックス第73巻収録)。
両さんが警察署のPCを不正操作し、ボーナス支給額を4000万円にしてしまう「ネオ・ボーナス争奪戦!!の巻」(ジャンプ・コミックス第78巻収録)。
両さんのツケの総額は、ボーナス全額でも全然足りなかった。そこで商店街の面々は、両さんが手にする超神田寿司の高額なボーナスに目を付け、壮絶なバトルを繰り広げる「ボーナス争奪戦'04の巻」(ジャンプ・コミックス第145巻収録)……と、いずれも甲乙つけがたい爆笑エピソードぞろいだ。
この機会に、ボーナスにまつわるお話のイッキ読みするのもお勧めだ。
それでは次のページから、歳末の空気感も楽しい両さんの破天荒な一日をお楽しみください!!



















