派遣の脅威はスキマバイトよりもAI
働き方が多様化し、短時間・単発の仕事を気軽に選べる環境が整ってきた。とくに若年層の間ではスキマバイトやスポットワークの利用が広がっているが、こうした動きは派遣業界にどのような影響を与えているのだろうか。
「影響がゼロとは言いませんが、派遣業界全体を揺るがすほど大きなものではありません。そもそも、日本ではかつて“日雇い派遣”という形で、短期・単発の派遣労働が広く行なわれていました。
しかし2012年の労働者派遣法の改正により、日雇い派遣は原則禁止となります。その代替として生まれたのが“日々紹介”です。派遣会社が雇用主になるのではなく、仕事を紹介するだけで、雇用関係は企業と個人の直接雇用になります」
現在広がっているスキマバイトやスポットワークは、この“日々紹介”をアプリ化したものに近い。仕組みとしては、派遣の進化形というより、制度上まったく別のルートだ。
「スポットワークは、比較的スキルを必要としない仕事が中心です。一方、派遣は即戦力や一定の専門性やスキルを求められるケースが多く、完全に競合しているわけではありません」
むしろ川上氏が「本質的な変化」として挙げるのは、別の要因だ。それが、AIや自動化の進展である。
「派遣業界にとって、より大きな影響を与えているのはAIや自動化でしょう。たとえばコールセンター業務では、チャットボットや音声AIの導入が進み、派遣社員が担ってきた仕事そのものが減りつつあります。AIがさらに進化すれば、必要とされるスキル水準自体が変わってくる。そうなれば、派遣に頼らなくても仕事が回る領域は、さらに広がっていくでしょう」













