「お尻を出したい(笑)」

肥後は8月に上梓した『頼る力』(小学館)でも、ダチョウ倶楽部の『負けの美学』について触れている。

「やっぱりダチョウ倶楽部は『負ける』という芸風なので。目の前の勝負で負けようとも、先を見ていくと、その負けは別に何ともないっていう価値観ですかね。目の前の勝敗にこだわらず、負けるなら綺麗に負けて、その周りの方にフォローされて、また違う展開が生まれていく。変なプライドを捨てて、綺麗に負けておけば、傷つかないし、すぐに立ち直れるし、次に進める。そんな感じですかね」

現在62歳の肥後は日々、積極的に後輩に『どうすればいい?』と助けやアドバイスを求めているという。

「年齢を重ねたこともあるけど、コンプライアンスという言葉が聞かれるようになったころから、こういうスタンスですね。現代の感覚を教えてもらわないでいると、後々大ケガするの自分。やっぱり世の中が変わってきましたから。今や漫才でも、叩くツッコミは激減しましたよね」

昭和の『何でもあり!』のお笑い界をかいくぐってきた肥後だけに、昨今のコンプラありき、炎上しないことが正義とされる笑いについて、寂しさや窮屈さを感じることはないのだろうか?

「昔はそう思っていました。だけど、ここまで時代が進んでくると、もう寂しさとかのレベルじゃない。メンバーを『パチン』と叩くと、お客さんがドン引きしたりする。世の中がそう思うなら、それに合わせてやっていかないと笑いは成立しませんから。

コンプラもルッキズムも、TPOがあるのであれば、演者もディレクターもそれを探り探りやっていくのは当然で。もちろん、萎縮しすぎるのはいかがなものか、という部分はありますけどね。昔はウケなかったら、とりあえず全裸になるっていう必殺技がありましたけど、もう使えませんから(笑)」

ダチョウ倶楽部結成秘話を語る肥後克広 撮影/佐藤靖彦
ダチョウ倶楽部結成秘話を語る肥後克広 撮影/佐藤靖彦
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最後に、肥後の夢を聞いてみた。

「大した賞じゃなくていいんですが、何かしらの賞を取ってみたいですね。あとはもう1回だけ、どこか大きな会場で熱湯風呂をやってお尻を出したい(笑)。『熱ーい!』って湯船から出ようとしたところを、引きずってたらお尻が出ちゃうっていうパターン。みんなに笑ってもらえるといいな」

その生尻の夢が叶ったとき、きっと天国の上島さんはニヤニヤしているだろう――。


取材・文/池谷百合子 撮影/佐藤靖彦