中国を叱るどころか、高市首相を叱る石破氏
そもそも、事の発端は、高市総理が国会で、「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」という趣旨の答弁をしたことだ。これに対し、中国政府は火がついたように怒り狂った。
まず断っておくが、私は高市総理のこの発言を、諸手を挙げて称賛するつもりはない。むしろ、致命的な欠陥があると考えている。それは「アメリカ軍が本当に助けに来てくれるのか」という、最も冷酷でシビアな大前提の検証が抜け落ちている点だ。
もしアメリカが動かなければ、日本だけが突出して梯子を外される恐れがある。その点において、高市首相の言葉は楽観的過ぎるし、論理的に破綻していると言わざるを得ない。
しかし、だとしても、だ。
日本の総理大臣が、「隣国で戦争が起きたら、日本も巻き込まれるかもしれない」という当たり前の危機感を口にしただけで、なぜ中国から恫喝されなければならないのか。
台湾を武力で併合しようと虎視眈々と狙い、軍用機を飛ばし、東アジアの海を我が物顔で荒らしまわっているのは、一体どこの国か。
東アジアの平和を乱している真の「トラブルメーカー」は、高市首相ではない。間違いなく中国である。
ならば、総理大臣経験者として、石破氏がなすべきことは一つしかないはずだ。「日本の総理の発言に過剰反応するな」「地域の緊張を高めているのは君たちだ」と、中国に対して苦言を呈することである。それが、国家の威厳を守るということであり、政治家としての最低限の矜持だろう。
ところが、石破氏は中国を叱るどころか、高市首相を叱りつけたのだ。
報道によれば、石破氏は11月26日の講演でこう語っている。
「(日本は)中国との関係を大事にしながら、わが国と中国は米国との関係を図りながら外交を展開する。当たり前のことだ」
さらに、「食糧の輸入、レアアースもそう。薬でもそう。中国との関係なくしてわが国は成り立つのか」と強調した。
この言葉は、一見すると「経済」と「安全保障」を天秤にかけるリアリストの分析のように聞こえるかもしれない。だが、よく考えてほしい。
相手がその経済的な依存関係を人質に取り、私たちの領土や主権を脅かそうとしている時、「関係が大事だから」と言って膝を屈してもいい理由になるだろうか。













