「お前の国の首相は、高市帝国でもつくる気なのか」
外の世界からは、日本のこの現実がさらに冷ややかに見えている。
シンガポールでヘッジファンドを率いる友人から届いたレターには「日本は円安を止める意思がない」「日銀は主体性を失い、政治は現実を見ようとせず、国民は慣れ切っている」「世界は19世紀の力の秩序へ戻りつつあり、日本は米中対立の踏み石として扱われている」と書かれていた。
そして最後に、皮肉ではなく事実認識としてこう記されていた。
「お前の国の首相は、高市帝国でもつくる気なのか」。
この一文に、外の世界から見た日本政治への不信と軽視が凝縮されている。日本は主体ではなく、国際政治の力学の中で都合よく扱われる存在に成り下がりつつあるという残酷な現実である。
国内市場ではソフトバンクによるエヌビディア株の売却が象徴的な動きを見せた。孫正義氏は、AIバブルの最高潮の熱狂の中にいながら、その熱狂と一線を画し、冷徹に利食いを断行し、本丸たる事業投資へ資金を集中させるという、極めて合理的な判断を下したことになる。
なぜ孫氏だけが、このタイミングで迷いなく利食いができるのかといえば、その背景には第一次ITバブルの記憶がある。
当時、ソフトバンク株はバブルの象徴としてランドマーク的に跳ね上がり、崩壊とともに企業価値とは関係なく暴落した。その残酷さを最も深く刻んでいるのは孫氏本人であり、だからこそAIバブルの熱狂を奇妙な既視感として捉え、利食いのタイミングを見誤らない。
バブルは企業価値とは無関係に膨張し、崩れる時は無慈悲である。その本質を身をもって知る者だけが、熱狂の中心で利食いの判断を下せる。
バフェットも孫正義も市場から資金を引き上げる
そして、この孫氏の動きの延長線上に浮かび上がるのが、ウォーレン・バフェット氏である。彼はいま、史上最大規模のキャッシュを積み上げ、日本株からも静かに距離を取っている。
投資哲学も時代背景も異なる二人の天才が、ほぼ同じタイミングで市場から資金を引き上げたという事実は、偶然ではなく、長い経験を通じて培われた“市場の本能”が働いていると考えるほかない。
市場が最も熱狂している時期にこそ、深い経験値を持つ者たちは静かに身を引く。これは歴史が繰り返し証明してきた市場の真理であり、私はこの動きを単なる投資判断としてではなく、時代の潮目として捉えている。













