「街に出てくるクマは、爆竹や鈴の音も効果がないと聞く」

クマ対応にあたる後方支援のため、陸上自衛隊が秋田県に最初に入ったのは北秋田市の近隣にある鹿角市だった。「クマダス」によると鹿角市では今年4月1日から11月11日にかけて、クマの目撃情報は834件にのぼる。

写真はイメージです(PhotoAC)
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鹿角市にある老舗の飲食店の経営者は、客足の減少について不安でいっぱいだという。

「例年は午後7時くらいから賑わうけれども、今年は人が本当に少ない。お客さんが夜に来て食べて飲んで、それから歩いて帰ろうとすると『タクシーで帰りなさいね』とアドバイスをしてしまうくらい、心配な状況が続いています。

幸いにもランチ営業中に常連さんが来たりして売り上げは維持しているけれど、これが毎年続くときつい部分もありますね」

飲食店の苦境は秋田県北部に限ったことではない。秋田県の県庁所在地である秋田市では、市内にクマの出没が相次いでいる。なかでも市内中心部にある城跡地に整備された都市公園では、クマの目撃が続き、立ち入り規制がかけられている。

写真はイメージです(PhotoAC)
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都市公園から500メートル先にある飲食店経営者の70代女性は、

「ここ数年で自動ドアが手動ドアになりました。自動ドアだと、クマが入ってきてしまうからです。街に出てくるクマは、学習能力が高く、爆竹や鈴の音も効果がないと聞きます。もう慣れているらしいですから。夜はまったく出歩けませんね。

秋田県では、もともと寒くなったら人が(外に)出なくなる傾向にあるのですが、そこにクマの出没が重なり、飲食店としては売り上げに大打撃です。半分くらいに落ちているのかな。真っ暗になったら、人通りなんてありません」

と苦境を明かす。また、

「もう何十年も秋田市内に住んでいますが、もともとクマは人を見たらびっくりして逃げる習性がありました。でもここ最近のクマはまったく違います。人を見かけたら平気で襲ってくることも少なくありません」

と続けた。

シャッターが下ろされた鹿角市の商店街(写真/集英社オンライン)
シャッターが下ろされた鹿角市の商店街(写真/集英社オンライン)
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秋田県では県内の市町村の半数程度が陸上自衛隊の支援を要請しているという。

そんななか、12日に行なわれた衆院予算委員会では、高市早苗首相がクマ被害の深刻化に伴い、2025年度補正予算案を活用し、各地の自治体へクマ捕獲などの費用の支援を拡充する考えを示した。

大館市内で飲食店を経営する男性(60代)は「クマ捕獲の対策もありがたいが、財政的な援助はまったくと言っていいほど出ていない。コロナ禍のときみたく補助金の対応もしてほしい」と語っていた。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班