コーヒーは水で変わる
よく考えれば、コーヒーの材料は2つしかありません。
コーヒー豆と水、です。つまり豆にこだわるのと同時に、水にもこだわるのが重要です。
ただ、日本の皆さんは安心してください。日本国内の水道水はコーヒーとの相性はいいので、最初は水道水で全然かまいません。ただ、カルキ臭は否めませんので、浄水器を通したうえ、煮沸することをおすすめします。
もっと美味しく淹れたいと思ったら、ミネラルウォーターを検討してください。
水に含まれる「カルシウム」「マグネシウム」はコーヒーの抽出に重要なミネラルです。カルシウムは主に質感を引き出し、マグネシウムは主に酸味(フルーティーさ)を引き出すことがわかっています。
また、「炭酸塩硬度」と呼ばれる指標がちょうどよいと、コーヒーの味わいがバランスよくまとまります。炭酸塩硬度とは、簡単にいうとミネラルの濃度です。いわゆる硬水、軟水で分けられる硬度のことと理解してください。
硬度がゼロか限りなくゼロに近い水(蒸留水やRO水)はコーヒーの抽出に向いていません。ミネラルがなければ、コーヒーの味わいが引き出されないのです。かといって、硬度が高すぎてもよくありません。ミネラルが多すぎると、コーヒーの成分を引き出すための水中スペースが少なくなってしまうからです。
日本の水道水はミネラルバランスがよく、コーヒーに向くのですが、それでもミネラルウォーターには敵いません。おすすめなのは、1Lあたり約30~50㎎の硬度のミネラルウォーターです。
山国である日本は、質の高いミネラルウォーターにも恵まれています。「サントリー天然水」はもっとも手に入れやすく、コストパフォーマンスのいいミネラルウォーターです。「クリスタルガイザー」はマグネシウム含有量が多めなので酸味やフルーティーさを引き出したいときにおすすめです。
私は以前、別の本で「コーヒーの98%から99%は水」と書きました。
コーヒーの材料は2つと先ほどはお伝えしましたが、結局はとくに水なのです。コーヒーにこだわるとどうしても豆や器具にばかり目が行きがちですが、一流店ほど水に気をつけている印象で、味の秘密は水にあったなんてこともあります。
コーヒーを突き詰めるあまり、水に帰ってくる。取るに足らないと思われているものにこそ気を使う。これこそが「コーヒー道」の精神ではないでしょうか。
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文/井崎英典 写真/Shutterstock













