もし私が長嶋さんから巨人入りを誘われたら……
私の現役時代にはFA制度がなかったが、もし1970年代にFA制度が導入されていたとしよう。私が権利を得た際、長嶋さんに巨人入りを誘われていたら、どうなっていただろうか。
今のFA制度は、「大学・社会人出身者の場合は145日以上の一軍登録者であれば7シーズンで取得できる」という規定がある。これに照らし合わせてみたい。仮に、1978年のシーズン途中には取得できる。このシーズン終了時点までで、南海、阪神時代を通算して8年連続2ケタ勝利を挙げている。心技体がピークを迎えていると自他ともに認めるタイミングで、長嶋さんからのお誘いだ。
「エモやん、ジャイアンツで一緒に野球をやろう」
どう考えても断る理由が一つもない。
「はい、喜んで行きます。よろしくお願いします」
二つ返事で巨人に行っていたと断言できる。
ただし、この年のオフはいわく付きといえよう。なぜなら、あの「江川事件」があった年だからだ。江川卓の入団先を巡る一連の騒動は、巨人がドラフトをボイコットするなど、前代未聞の事態に発展。野球界のみならず、日本列島を巻き込む台風の目のようになっていた。
その最中に私が巨人に入るわけだ。無論、「阪神に対する裏切り行為」と受け取られ、阪神ファンからの執拗なバッシングを覚悟する必要があったはずだ。
けれども、結局のところ私も落合同様、「長嶋さんと同じユニフォームを着てプレーすることの喜び」のほうが勝っていただろう。
文/江本孟紀 写真/shutterstock













