「心地よい疲労感」こそ最高の睡眠薬だ

ベッドに入ってもなかなか眠れない──。日本人の成人の5人に1人が慢性的な不眠に悩んでいるという(厚生労働省「国民健康・栄養調査」より)。その原因の多くはストレスの蓄積、あるいは不適切な生活習慣らしい。

でも断言する。深刻な睡眠障害はともかく、寝つきが悪い程度の不眠なら一発で解消できる。なかなか眠れないのは体力があり余っているからだ。言い換えれば、不完全燃焼で1日を終えたからだ。簡単に眠りに落ちないのは当然だろう。

写真はイメージです  (写真/shutterstock)
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だから燃焼すればいいのだ。1日を通してエネルギーをとことん使い切る。それが安眠の鍵である。

旅行先でいつもよりぐっすり眠れた経験はないだろうか。それはどうしてだろう。ホテルのベッドの寝心地が良かった?それだけではない。もっと大きな理由がある。日中に五感をフル稼働させたからだ。

慣れない土地を歩き回って、知らない場所、知らない人、知らない料理に神経を昂らせる。そうして心身のエネルギーをひたすら消費していく。すると、宿に戻ったころには体力ゲージはほとんどゼロだ。体も脳もシャットダウンをせがんでくる。だから熟睡できるのである。

普段の日常生活でも同じだ。プレッシャーのかかる重要な仕事をやり遂げた日。趣味に没頭するあまり時間を忘れて過ごした日。あるいはデートで大好きな相手の身振り手振りに全神経をそそいだ日──。

力を振り絞ったそんな1日の終わりには心地よい疲労感が訪れる。完全燃焼したのだ。その充実感はどんな睡眠薬よりも強力な作用をもたらす。

寝つきの悪い夜が続くようなら、1日の過ごし方を見直そう。野心を持って仕事に打ち込めただろうか。つねにおもしろいアイデアを模索していただろうか。動きまわってひたすら楽しめただろうか。「今日はやりきった」と大きく息をつけるなら、快眠という最高のご褒美が舞い降りるだろう。

僕は毎日、朝から晩まで仕事と遊びに駆け回っている。だからベッドに入るころにはいつもクタクタだ。明日も頑張ろう──そう思う間もなく眠りに落ちる。そして目覚めたときにはあらたなエネルギーで満たされている。力がみなぎる。いつも絶好調である。

最近、ネット上で「リベンジ夜ふかし」という言葉が流行っているらしい。日中に満足感や達成感を得られなかった人が、夜更けまでショート動画やネットフリックスをだらだら眺める。そんなある種の埋め合わせ行為のことなのだという。

睡眠時間を犠牲にして憂さ晴らしをするわけだ。そんな人生は御免だ。生きながらにして死んでいるようなものだ。

毎日を惜しみなく生き切ろう。エネルギーを放電してフルチャージしよう。日々のその健全なサイクルがあってこそ、あなたの体と心は整うのだ。

最高の疲労が最高の回復をもたらす。良い眠りが良い人生を形づくるのである。