今のグラビア業界に思うこと 

熊切をはじめ、当時のグラビアアイドルたちをそこまで過酷なダイエットに駆り立てていたのが、写真修整の技術的限界だった。今では当たり前すぎて実感がわかない人も多いかもしれない。

「私が若いころは、まだ写真のレタッチ作業が一般的ではなくて、別料金が発生する専門的な領域だったんです。

『ちょっとウエストを細くできますか』『肌をきれいにしてください』ってお願いしても『ダメだよ、その作業料金だけでいくらかかると思ってんの』って言われるのが当たり前でした。

売上を見込めて予算が出るような有名人だったらやってもらえたのだと思いますが、普通のグラビアの子たちには無理な願いでした」

今では当たり前のように行われる修整作業も、20年前のグラビアアイドル業界では予算的に気軽にできるものではなかった。

「胸は水着などでなんとか盛れるんですけどね。私だけでなくて、当時のグラビアの子たちは下剤を飲んでいる人が多かったし、ウエストをどうにかして細くしたいと悩んでいましたね」

20代の頃のグラビア業界を語る熊切あさ美(撮影/山田智絵)
20代の頃のグラビア業界を語る熊切あさ美(撮影/山田智絵)

当時のグラビアアイドル業界の過酷ぶりを語ってくれた熊切だが、興味深いことに、「今の方が過激」だと指摘する。

「昔って、グラビアアイドルのデビュー当初は水着の生地の幅が大きかったんですね。それが、売れてくると生地が小さくなってくるんです。

でも、今のグラビアを見ていると、最初からとんでもなくきわどいものからスタートしてますよね。あと、『それは水着なの!?』という衣装だったり。『え、こんなに売れてる子がこんなグラビアしちゃうんだったら、これから続く人はもっと脱がなきゃいけないの…?』って思うこともあります」

透けている水着、極端に生地の面積が少ない水着。インパクトを追求するあまり、デビュー当初から過激なコンセプトを強いられる現在のグラビア界に、彼女は複雑な思いを抱いている。

「逆にもっと着ているグラビアがあってもいいんじゃないかなと思うんです。みんながみんな、ちょっと同じ方向に行きすぎている気がします」