NHKのドラマ班の狙いは……
また、「話題作り」と言われがちな起用でも、SNSでの盛り上がりは軽視できない。ある映像制作会社関係者はこう語る。
「2024年に放送されたNHK連続テレビ小説『虎に翼』が異例の成功を収めて映画化に至ったのも、放送のたびにSNSで語られ、話題になったことが大きい。そのため、SNSで火をつけるために“話題になりそうなキャスティング”を仕掛けるのは、今や当たり前の戦略とも言えます。
ただ、それを従来の大河や朝ドラの文脈で見てしまうと、視聴者にとっては違和感になるのかもしれません。だから否定的な声も目立つのでしょう」
単純な視聴率だけでは語れない時代。だからこそ、芸人の起用によって大きな話題を呼び込めるのだ。
「制作者としても、“若手実力派俳優”より、コントで演技を磨いてきた芸人の方が、人気があり起用しやすいんです。芸人にとっても、ドラマや映画への出演は“演技力の証明”になるため、目標の一つになっています」(映像制作会社関係者)
前出の堀江氏は、特に印象的な役として、ダチョウ倶楽部・肥後克広が演じた彫師・四五六の名を挙げる。
「蔦重が彫師たちに『吉原細見』の制作を依頼するも、老舗の地本問屋に阻まれ、彫師たちもまともに取り合ってくれない。四五六も『そんな割の悪い仕事、受けてられるか! 帰れ、べらぼうが!』と怒鳴り、蔦重を追い返して扉をバンと閉めようとします。しかし、扉が閉まる寸前、蔦重が桶を差し込んで『わかりました! 吉原での大宴会付きでいかがでしょうか?』と叫ぶと、即座に扉が開き、四五六が満面の笑みで迎え入れる……。これは肥後さんの芸風とキャラクターが活かされたキャスティングでしょう」
そんな『べらぼう』も、いよいよ残すところ数話で最終回を迎える。重要キャラクターとして野生爆弾・くっきー!演じる勝川春朗(のちの葛飾北斎)も登場したが、堀江氏はもうひとり、注目すべき人物の存在を示唆する。
「それは、謎の絵師・東洲斎写楽を誰が演じるのかという点です。名前と作品は知られていますが、実は活動期間は約10か月と短く、正体について有力説はあるものの、それが絶対確実とはいいきれません。そんな写楽を、蔦重は前例もない中で抜擢します。ここが『べらぼう』終盤の山場になるのですが、これまで多くの芸人が登場してきた流れから考えると、きっと予想を超える芸人がキャスティングされるのではないかと思います」
なお、史実を知る者にとっては、爆笑問題・太田光が演じる人物も1回限りの登場であっても、今後のストーリーに大きな影響を与える重要な役どころになると見られている。
今後も『べらぼう』から目が離せない。
取材・文/千駄木雄大













