「選手が着てないTシャツが売れるわけないだろ」

選手ごとのグッズやアパレルに関しては、選手自身が要望やアイデアを出すケースもあれば、会社お任せの人もいる。僕なんかはデザインやカラーを全部自分で考えて、物販の方のアイデアなども取り入れながら、自分が着たいTシャツを作り、そして着るようにしている。

歯がないことを逆手にとり制作した「TA歯NASHI」Tシャツ(本人SNSより)
歯がないことを逆手にとり制作した「TA歯NASHI」Tシャツ(本人SNSより)

これには武藤さんに「選手が着てないTシャツが売れるわけないだろ」と言われたことの影響もあるかもしれない。武藤さんはメディアなどに出る時、絶対に自分のTシャツを着ている。ファンの方も、やはり選手が着ているのと同じものが着たいはずだという考えもあるだろう。

いろいろ書いてきたが、それ以前の話として、新日本プロレスに所属している選手のファッションセンス自体が、最近はすごく良くなったと僕は感じている。その結果、グッズやアパレルの幅が広がった部分もあり、昔に比べて売上も上がってきた。だからこそぜひ新日本プロレスに入門した選手には、早く自分のTシャツを出せるまで頑張ってほしいと思う。

もちろんユニットやチームのTシャツはあるけど、やっぱり個人のTシャツを出せるというのはヤングライオンを卒業した証の一つだ。他のスポーツでも1軍に上がったら個人グッズが出たりするのと同じかもしれない。

ただグッズに関しては、会場人気と実力に比例して売上が伸びるわけではないのが難しいところだ。リング外の人気が必要だからだ。例えばスター選手でも内藤はめちゃくちゃグッズが売れるけど、オカダはリング上の人気に比べると、あまりグッズが伸びなかった。

僕自身も、かつて闘魂三銃士が大好きだった頃、武藤さんと蝶野さんのTシャツは買ったけど、なぜか橋本真也さんのTシャツは買わなかった。もしかすると、「破壊王」とバーンと大きく書かれた橋本さんのグッズは、クセの強さに手が伸びなかったのかもしれない。

このように、会場では圧倒的な歓声と人気を集めても、それとは異なる動きをするアパレルの売上に関しては不思議な感じもする。そのあたりの研究も含めて力を入れていきたい部分だ。

最近だとファミリーマートさんがコンビニウェアの展開に力を入れていることが知られているけど、靴下だけじゃなくアウターなども展開されていて、先日はファッションショーも行われていた。

僕は昔から服が好きなので、いずれはプロレスアパレルのファッションショーをやることが夢だ。

文/棚橋弘至

『棚橋弘至、社長になる プレジデントエースが描く新日本プロレスの未来』(星海社)
棚橋弘至
『棚橋弘至、社長になる プレジデントエースが描く新日本プロレスの未来』(星海社)
2025年5月21日
1,430円円(税込)
192ページ
ISBN: 978-4065396742

棚橋弘至が語る社長就任劇と新日の経営戦略、プロレスの未来

新日本プロレス「100年に一人の逸材」棚橋弘至、新日本プロレス社長に│2023年末の衝撃的な社長就任から1年余りを経た現在、社長・棚橋弘至はどのような日々を送り、経営者としていかなるビジョンを抱いているのか? 社長就任の知られざる舞台裏から選手兼社長としての日常、プロレスW字回復への逆転戦略、世界展開への意気込み、選手引退後のキャリア構想、そして尊敬する木谷高明オーナーとの経営問答まで、社長・棚橋弘至の頭の中が1冊で丸ごとわかる、全プロレスファン必読の仕事論にしてプロレス論!

新日本プロレスオーナー・木谷高明との特別対談収録!

*以下、本書目次より抜粋
はじめに 年に一人の逸材、19年ぶりの選手兼社長になる

第1章 社長就任まで

第2章 社長・棚橋弘至から見える新日本プロレスの現在地

第3章 現役レスラー社長の日常

第4章 これからの新日本プロレスが目指すもの

第5章 新日本プロレスの社長とオーナーが考えるプロレスの未来 木谷高明×棚橋弘至

amazon